羊を巡る冒険風に

どこから話したらよいのか迷う話である。フィリップ・グラスのミニマル音楽の様に永遠の循環コードに入ってしまう。北大のjazz研は定期演奏会が終わった12月の吉日に新3役が発表され3人でlazyにも挨拶に来る。前部長M上の時はバイトの都合で1人で来た。たまたまその時M上は村上春樹の「スプートニクの恋人」をもって現れた。その本を取っ掛かりに雑談を始めたのを覚えている。登場人物に「ミュー」という女性がいる。部員にも同じ名前の子がいるが部長は分からないと言った。苗字で呼ばれているからであろう。高市早苗の鹿問題で有名になる前から彼女は「鹿ちゃん」と呼ばれlazyに出演しているもう一人の鹿と区別し小鹿またはバンビと呼んでいる。M上は心理学を専攻しているがそれは母親の影響であることを話してくれた。村上春樹は心理学者河合隼雄に影響を受けており対談集も出している。親御さんは河合隼雄の授業を受けたがったがかなわなかったという。神戸女学院大学出身と聞いた。僕が神戸女学院大学を知っているのは思想家内田樹が勤務していた事。建築家ボーリーズがデザインしマイクを使わなくとも声が届く構造になっている素晴らしい建築と知っているからだ。その親御さんが来札していると風の便りで聞いた。ちょうど連絡することもあったので「親の顔をみたい」と言ったら本当に顔を見せに連れて来てくれた。M上は弄られきゃらであるがその其のとっ付きやすい人柄で部員を引っ張っていた。それは親御さんのおおらかさを引き継ぎでいると感じた。その日小学生からの幼馴染Kバチもついてきた。KバチはM上を慕って岡山から北大に来て一緒にjazzをやっているのである。村上春樹の初期三部作「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊たちの冒険」は鼠3部作とも呼ばれている。主人公の「僕」と「鼠」の関係はM上とKバチの関係を彷彿とさせるのである。