壼阪健登(p)若井俊也(b)伊藤宏樹(ds)
壺阪が居住地ボストンをやっとの思いで脱出して、帰国できたのはつい最近のことだ。そうした経緯の中で、今年最後の月に彼を聴くことが出来るのは、何かの縁が取り持ったささやかな贈り物と言えるのではないか。
昨年、初めて壼阪を聴いた印象を手短かに言うと、“清新なエモーション”である。ミュージシャンにお好みを訊いたとして、まずは楽器奏者がきて、副次的にシンガーがくることもあると思っていた筆者は、壼阪がB・ホリデイをこよなく愛するということに特異な感じがしている。そのせいだろうか、壼阪が誰に似ているかを問われたなら、壼阪に似ているとしか言いようがない。一流の演奏にはクツロギもあれば、一音も聴き逃せないという緊張もある。壼阪は若くしてそこに仲間入りしているように思う。そこに与する若井はこれまで様々な企画をプロデュースして楽しませてくれているが、本業での太さと繊細さを兼ね備えたプレイには震える。そして抑制的にサポートする伊藤のドラムスも文句なしによい。演奏曲は「East Of The Sun」「Good Morning Heartache」「I Could Write A Book」「For Heaven’s Sake」「The Blessing」「I Wish I Knew」「My Old Flame」「Francisca」「Little Girl Blue」「Bye-Ya」「Santa Claus Coming To Town」。
さて、私こと。壺阪の「壺」という字を多分生まれて初めて書いてみた。スラーッと書けない。コルトレーンのLIVE-IN-JAPANを想い出す。スラーッと聴けない。
このとおりの世情なので、壺阪は当面の間は日本に留まることにしているらしい。しかし、彼も人の子、いつ気が変わるやも知れない。事態の急変を予期してか、壼阪の掲示板には次のとおり書かれていたので紹介する。
☆<IMPORTANT !>☆この日のLIVEは近々CDRで提供されるようなので、是非ともお求めくださることをお願いします。再び勢いづくことを「捲土重来」と言いますが、このCDRに関しては「健登頂戴」と言います。詳しくはHPをご覧ください。またLAZYBIRDで演奏できることを待ち望んでおります(壼阪健登)。
(M.Flanagan)
2020.12.11-12 YOUNG LUNA TRIO
LUNA(Vo)壼阪健登(p)若井俊也(b)
LUNAはかつてが、壼阪はいまが、若井はなまえがYOUNG。ベタなトリオ名で恐縮する。LUNAが札幌に初お目見えしてから10年以上経つ。最近はその年月をlook-backしているのだという。この春には「Forever Young」に心を込めた。そして今回は自己検証するかのように「My Back Pages」を採り上げた。いずれもB・ディランの曲というのが興味を引く。人は一度は本気で人生を振り返るのだろう。そのタイミングは人それぞれだと思うが、LUNAにとっては今なのだということが、本格的な大人の歌唱となっていることによく出ていた。我らを説き伏せた一連の曲は、「Silver Bells」「Gee Baby」、「Frim From Sauce」、「Love For Sale」、「What are You Doing The Rest Of Your Life?」、「My Back Pages」、「My Favorite Things」、「You Must Believe In Spring」、「Here’s To Life」、「Give Me The Simple Life」、「We Shall Overcome」、「This Cristmas」、「Everything Must Change」、「Winter Wonderland」、「Hallelujah」「Christmas Time Is Here」「Here’s That Rainy Day」「Lost In The Stars」「I’m Beginning To See The Light」「The Christmas Song」。
このライブは、そんなこんなのコロナの1年をYOUNG- LUNA- TRIOがブレークスルーした極めつけの2夜と断言しておく。初期の山下トリオに“ミナのセカンド・テーマ”という作品がある。今回聴いていて“LUNAのセカンド・テーマ”は幾つかの曲名にもある“LIFE”ではないかと思うのである。勿論、ファースト・テーマはVOCALを極めることだ。
LUNAからライブ・レポートで余り茶化すな、と釘を刺されたのでそれに従う。今年のLUNAはRockに、昭和歌謡に、たまたまJazzに素晴らしい足跡を残していった。今後もLUNAの誤作動を期待して止まない。これで約束を果たした。ハハハ。
<追伸>このトリオの二日間も各CDR提供されるようです。
(M.Flanagan)