2022.11.20 創作料理「カニタマ」

秋田祐二(b)本田珠也(ds)菅原昇司(tb)南山正樹(p)三浦広樹(g) feat.林栄一(as) 
本田珠也は鈴木良雄さんのThe Blendのメンバーとして道東から札幌までのツアーを終え、本来ならそのまま帰京するはずのところ、もうひと暴れして行くという申し入れを受けて、このLIVEが成立したとのことである。事前の告知ではカニ・バンドwith本田珠也であったが、開演直前に急遽「カニタマBAND」とアナウンスされ、そこそこ「笑い」を取っていた。それはさて置き、これだけ名前が並ぶと誰に焦点を合わせるか人泣かせである。ひと「笑い」も取ったことだし、対極の必須科目である「泣き」について考えてみることとしよう。かつて美空ひばりは「悲しい酒」を歌っているときに止めどなく涙が滲んでくると言っていたが、彼女の歌唱力から納得させられたものだ。演歌でもRockでも「泣き」を売りにしていることが結構あり、謂わば「泣き」を商品化しているのだが、そうしたことと本物の「泣き」は容易には判別しにくい。けれどもそこには確実に違いがあると感ずる。例えば年がら年じゅう怒りまくっているようなミンガスを聴いていると、堪らなくなる瞬間に引きずり込まれたりする。こういう時は素直に「泣き」を受け入れていいのだと思う。そこでだ、今日のSpecial Guest林さんに同様の思いが重なってしまう。荒々しくも極めて鋭利なアイスピックのようで、林さんの音からは余計なものが紛れ込む余地のないPureさを感ずるのだ。Pureさの本質は透けて見えるところにはないので決して騙さてはいけない。何につけ流されやすい我々ごときであっても、気がつくと叫びを囁きとして聴いてしまっていることがあり、それを大切にしたいものだ。今日は林さんの日にしよう。涙腺が決壊する場を提供して頂いたのだから。おっとっと、「カニタマ」の味つけについて言いそびれるところだった。リピーターは語る。相変わらず「濃い目だな」。演奏曲は「Monkey Business」「Lonely Woman」「皇帝」「Penny Saved」「Ladie’s Blues」「North East」「回想」「Mary Hartman」など。