2024 Lazybird Watching


「今年もあっという間でしたね・・・」、かつて聞き流していた会社トークが、今頃になって身に染みる。レイジー・ライブで誰と誰の編成だったのかが明快に思い出せないことがよくある。しかも今年のことだったかどうかさえ怪しくなる始末だ。こういう時は、レイジーはマルチ実験の場だからシャーないと決め込むことで窮地を逃れている。そんな曖昧meではあるが、先を進めよう、まずは<上半期>から。年始のことはよく覚えている。タツル・里菜DUOで暖かみのあるスタートを切った。冬季は行動が鈍りがちになるが、2月に入ると田中菜緒子が若井俊也と柳沼を従えて一仕事をこなし、この流れで噂のギター平田晃一を聴くことができた。正統派の旗手だ。3月の記憶は田中朋子sextetで、朋子さんのallオリジナルにシミジミした。そして久し振りにフルート&ベースのDUO、アンタのバラードに好感。4月に突入、いよいよ粉骨砕身20周年の体当たり企画が実現した。一人づつならいざ知らず、このメンバーを札幌に集結させるだけで至難のことだったと思われる。そこから新たな物語が綴られていく。第1章は壺阪健登トリオ(楠井・珠也)、第2章はクライマックスとなる鈴木央紹参加のカルテットである。珠也は高を括ったように「ヤツとは、1,2回しか演ってなくてよォ」と反り返って言っていたのだが、演奏が始まるやいなや尋常ならざる異例のパフォーマンスとなってしまった。これは数あるレイジー・ライブのなかで最高峰に位置するものと確信する。珍しく央紹による調性にソッポを向いたような演奏が聴けたのは貴重。本人曰く「なんちゃってフリー」なのだそうである。壺阪のオリジナルが主体であったが、”Never Let Me Go”のようなスタンダードは全員の理解度の深さが結合されていて一言には置き換えられない。そして書かれざる終章は札幌から持ち去られた。珠也の男気によって東京で”レイジー・バード・リユニオン”なるユニットとなって20周年特別企画が継続されたのである。この突出した決断にはちょっと目頭が熱くなる。Jazz東京道五三次に新たな宿場ひと次が札幌レイジーから追加されたのだ。記憶に刻んでおこう。マズイ、これ以上この話を引っ張ると4月で今年が終わり兼ねない。暦をミシン目に沿って引き裂いて5月。前の月にエキサイトし過ぎてバッテリーが底をつき、暫く充電の日々が続いたようである。その傍ら、米木さん支援を呼びかけていたのは、説明不要の繋がり故であろう。中旬になると、.Pushトリオそして松島が一枚かむ。腕利きの中堅と大物の中で、若き富樫の才気溢れるプレイに頷かされた。毎年6月は件の米木さんと大石のDUOだが、今年は大石のSolo。学生客が多く予定曲を幾つか差し替えたり、緊急講座を開いたりの何時にない展開で賑わいをみせていたのだった。
 時は<下半期>を告げる。7月になると入魂一徹のプログラムに出会う。まずは魚返明未と井上銘、ノンストップの40分に及ぶ一幕に「アンタらここまで演やるか」と唖然。この密度の濃いDUOに舌を巻き、飲み過ぎて舌がもつれた。一夜明けて竹村一哲グループ。このグループはレイジーに来演を重ねるとともに、最早、完熟期を迎えている。引き締まった出色のパフォーマンスが連続する。中でも一哲作の「トゥワイライト」は魚返が長めのイントロを引っ張り、そのあと銘がガツーンと入ってくる瞬間があり堪らない。アルバム「KAGEROU」でも採り上げられているが、インパクトの強さではこのライブに分がありそうだ。8月、央紹が来演できなくなり、本山トリオ(三嶋大輝、橋本現輝)となったが、本山のリーダー・シップの下、バックが文字通り”輝いて”いたな。9月は渡辺翔太のトリオ(俊也・海斗)から。ビッグな発展途上ドラマー海斗のプレイをしかと確認した。翔太はいつも素晴らしい、もち俊也も。次いでLUNA北海道ツアーの一環での一席、古舘・町田の2ギターによるトリオだ。どうやらツアーの中でも選曲その他、ここだけのSpecialメニューだったようである。月の〆は山田丈造4(武藤勇樹、古木佳祐、高橋直樹)、丈造を筆頭に皆んなレベル高いわ。残暑ともお別れの10月。例年は初夏のアルト・ヴォイス松原絵里がひょっこり秋口に現れ、どっしり風格を置いていった。少しズームを引かせて頂きたい。レイジーと縁の深いMarkがコロナ期のブランクを挟んで5年振りにカナダから来てくれた。たまたまライブだった鹿川3の北垣(b)や里菜4の菅原(tb)らと旧交を温め、彼も満足して帰国したに違いない。それから久し振りの按田・斎藤のクラジャ・ブレンド、ここには普段のライブと異質の緊張感がある。二人の演奏力だけでも楽しめると言っておこう。やれやれ霜月だ。この辺りになると昨日の熱気がすぐそこにある。加藤友彦トリオ(高橋陸・柳沼)がきっちりお膳立てをしてから、我らが松島の参入となった。最早その名聞いただけで音が聴こてくる。お題なしに”松島”と聞くだけでレイジーに座布団2枚。師走の「ライブ・ショーは歌謡」だ。古舘・夏美が昭和を誘い出して、まんまと別ものにリメイク。JAZZも決して油断してはならぬ。書き漏らしを悔いつつこうして振り返ると、おぼろな記憶を超えて忘れられぬLIVEが沢山あった2024だったと感ずるのである。あっちょっと待て、これからサンタ目掛けて池田篤ほかホット連がやって来る。Lazybird Watcherの皆さんに呼び掛けておきたい。締め括りのbirdsを数え落としては、今年は終わらないよ。何はともあれ二十歳になった今年のレイジーは青春してたな。
(M.Flanagan)