2024.6.28-29 大石 学 DUO & SOLO


ご承知の事情により6月の恒例企画は米木さん抜きに切り替えられ、大石・NAMIのDUOおよび大石のSOLOとなった。NAMIさんは何度か聴いているが、濃すぎず薄すすぎずの中間領域で活躍されているという印象をもっている。ライブで特段ヴォーカルを追い続けるような熱心さを持ち合わせては来なかったが、相手が大石となると別だ。大石はシンガーと自身を夫々自立させつつ、絶妙のコラボレーションを演出する。流麗に寄り添いながら、時折ドキッとするフレーズを注ぎ込む瞬間があり、それと同時にNAMIさんの表情から心が腕まくりし始めていることが見て取れた。こういう咄嗟の相互反応は我々をグイグイ引き付けていく。演奏は淀みなく進行するのだが、1ステ、2ステとも途中で大石のソロが各2曲挿入され、ライブ全体のメリハリに効果的な作用をしていたと思う。歌と歌バンに喝采だ。演奏曲は「Raindrops Keep Fallin’ On My Head」、「Under Paris Sky」、「Tow For The Road」、「生きていれば(solo)」、「安らかな志(solo)」、「One Note Samba」、「Corcovado」、「Devil May Care」、「My Favorite Things」、「So In Love」、「I Concentrate On You」、「Rainy Days And Mondays」、「上を向いて歩こう(solo)」、「ひまわり(solo)」、「I Let A Song Go Out Of My Heart」、「見上げてごらん夜の星を」、「New York State Of Mind」、「Caravan」。SOLOの日は前日の演奏曲から幾つかをピックアップしながら、「E More Me(≒いも美)」、「花曇りのち雨」、「I Fall In Love Too Easily」、「Alone Together」、「What A Wonderful World」などが選曲されていた。もっと聴きたかったが、それは来年の復活ライブを待つとしよう。
 大石の2daysは会場を大いに湧かせて終了した。湧かせた理由は三つ考えられる。一つは何と言っても全くスキのない演奏によってである。二つは初日に二度不規則発言をしたことである。それは女性客が大半を占める中「今日は若い人がいらっしゃっていない…」(事実と推定されるが、会場大いにどよめく)、三つはNAMIさんが発した”かつて大石さんはよく正装で演奏していましたよね”とのコールに対し、Tシャツ大石のレスポンスは「ちゃんとした所ではちゃんとしたものを着る…」(LBとの長年の付き合いに照らし、会場大いにざわつく)。口を開く大石は、その社交辞令なき演奏と真逆なのである。なお、二日目はジャズ研メンバーになりたての学生さん達が多数詰めかけていて、終演後に大石による緊急講座が行われた。彼らは思わぬボーナス・トラックに等しく目を輝かせていたのだった。最後に米木さんのことに触れておきたい。年内はほぼ療養に専念と見込まれていたが、新着情報によると最寄りのライブ・ハウスでセッションに参加するまでに回復しているそうである。それを聞いて遠くから胸を撫で下ろしている。くれぐれも無理のない範囲で復帰の途を進まれんことを願うところである。
(M・Flanagan)
付記
この日の演奏を聴いていて二つの記憶が蘇ってきた。中本マリさんがlazyで「ひまわり」を歌ったときのことだ。臼庭潤もよくこの曲を演奏していた。この日マリさんはバックを務めていたセシル・モンローが亡くなったことを知らないでいた。臼庭がセシルとここで演奏した時20年ぶりと言っていた。思わず涙が込み上げてきた。「見上げてごらん夜の星を」は森山威夫バンドで井上俊彦が演奏している。1994年のアルバムである。このアルバムが発売されたときいつもクールに吹き切る井上に得も言われぬ暖かさを感じ思わず井上に感動したと電話した事を思い出した。二人とももうこの世にはいない。