2025.3.24 三島大輝の全貌 (Bass Solo)  


 三嶋は昨年来ベース・ソロをやり始めている。彼が初登場してから7年くらい経つのだが、それ以降、上昇気流に乗って今日に至っていることは衆目の一致するところだろう。筆者はレイジーでのライブでしか三嶋を聴いていないが、この間の彼の足跡を見極めるにはこれで十分である。何故なら三嶋自身がレイジーでのライブ体験が、飛躍の引き金になっていると吐露しているのだ。
 まぁ普通はベースのソロ・ライブとなれば、”So What?”という突き放した反応が予想できる。だが実際のところ、想定外の客入りとなっていたのである。三嶋を起用している貞夫さんを肌で知ることのない若者たちも来場していた。この事態は音楽的な才知以外にも三嶋に人を引き付ける何かがあるのだろう。しかしそれに増して気に止めておくべきは、普段のリズム・セクションの一員とは異なる重石を自らに課すSolo演奏という彼の選択である。ここには一定の到達点に届いた現状を、今一度振り出しに戻して新たに自己確認を試みようする熱意が窺える。そしてその気迫は演奏に連動していく。欠伸が出たら帰るとあらかじめ釘をさしておいたのだが、緊張感を孕んだ演奏は止むことがなく、筆者の予見を覆す嬉しい大誤算になってしまった。このSolo演奏に臨んだ彼の覚悟には濁り一つないと、感傷すら滲んできた。そして全曲に亘ってOne Bass Hitを放ち続けた様子は、今日の三嶋の全貌を捉え切っていたと言っていいだろう。滅多に聴く機会のないベース・ソロではあるが、今般それに接し大変恐れ入りました。演奏曲は「Goodby Pork Pie Hat」、「Hallucinations」、「For Heaven’s Sake」、「Violets For Your Furs」、  「Soon I Will Be Done With The Troubles Of The World」、「No More Blues」、「Luiza」、「Star Dust」、「陰のみぞ知る」、「Time After Time」、「Blues In The Closet」。
 前段でも触れたが、三嶋にとってレイジーは単なる活動の場ではない。それは東京でも共演が叶わぬ先導者たちの胸を借りることを可能にする幸運と転機を呼び寄せる場だったのである。その縁は思わぬ広がりに繋がることもあった。2年余り前になろうか、東京のとあるライブ・ハウスにて三嶋率いるトリオと池田篤、松島啓之、鈴木央紹という夢の共演が実現していた。そのライブで、三嶋は「今日の素晴らしい機会が実現たのも、札幌のレイジー・バードという店にお世話になったのが切っ掛けになっているのです」と率直に語っていたらしいのである。今回のライブの帰りがけに「本当はSolo活動のスタートをレイジーからにしたかった」と胸の内を明かしてくれた。そういう純真さを備えた好漢が三嶋大輝なのである。
(M・Flanagan)