2025.4.11 田中朋子6 二つの「VEGA」


田中朋子(p)奥野義典(as,bs,fl)菅原昇司(tb)岡本広(g)斎藤里菜(b)竹村一哲(ds) 
 つい最近のことである。田中朋子さんの新作、Sextetでの「VEGA」がリリースされた。既に本HPでの紹介もあるので、知る人も少なくない筈だ。このアルバムはコンポーザーとしての朋子さんの集大成を記録した記念碑的作品である。筆者はこのアルバムを繰り返し聴いていたので、兼ねがね生でも確認しておきたいと思っていた。従って、このレポートはアルバム「VEGA」とレイジー「VEGA」の聴き比べについてお伝えすることを旨としている。結論は至ってシンプルだ。アルバムの方はライブ録音ということもあり、それが意識された緊張感ある演奏を存分に捉えたものになっている。一方レイジー・ライブは、大仕事を終えた緊張感から解放されたためだろうか、満面の笑みを交えながらも集中を途切らせない様子を間近で捉えられたものだ。これまでアルバム・リリースとそれに連動させたライブには何度も出会ってきたが、この両方を聴き分けることは夫々を楽しむことによって目的は達成されるのであって、優劣の判別へと急いでしまう前のめりは少しもスマートではない。この日のライブが終わって、筆者は悩むことなく二つの「VEGA」を楽しめているなという実感を持ったと自信をもって言っておきたい。
 なお、この夜は朋子さんのSoloを聴けたことと、逢いたい気持ちがままならぬ「OTARU」ほかアルバムには収録されていない オリジナル数曲が提供され、思わぬ副賞を持ち帰ることができて機嫌が上々となった次第である。
(M・Flanagan)