昨年は連年企画の6月LIVEが周知のショッキングな事情によりbookingされなかった。1年前の今頃はレイジーを含め、様々な立場から米木さん支援の動きが広がっていたことを思い出す。ご本人はその後、予想を上まわって順調に回復し、今年に入ると完全復活を伝え聞くところとなっていた。この程はそれを直に確認する待望のLIVEなのである。従ってこの日は単に聴く機会の間が空いたという以上の感慨を強いてくるのだった。そんなこともあって、DUO演奏をDUO演奏として向き合って聴いているのだが、米木さんを襲い私たちを不安で覆った時の流れも聴いていたように思う。さて、両者の共演歴は長いが、数年前から大石の着想により米木さんはエレべに持ち替えていて、このLIVEもそれを踏襲したものだ。音色や長さを調整可能とするエレクトリック楽器は、明らかにグルーブの違いとなって我々の耳に届けられ、エレべ効果を最大限に引き出そうとする大石の目論見は、理想的に具現化されていた。そこには大石の過敏な神経作用と譲らない気骨があるのを感じさせられる。妥協を嫌悪する大石はいつも通り健在だ。余談になるが、久しぶりの両者の再会が勢いづけてか、この日はいつになく曲間に饒舌が飛び交っていた。大石は天上から降りて来るままに曲作りを重ね、それは3000曲に及んでいるらしいことやら、大石の下関少年時代の話やら何やらかんやら人生いろいろである。演奏曲は「June Part1-Part2」、「Talisker」、「Color」、「花の森のジャンヌ」、「I Fall In Love Too Easily」、「Long Ago&Far Away」、「Sirius」、「E More Me(原題”いも美”)」、「Round Midnight」、「Nebula」、「雨音」、「Peace」。
このLIVEで米木さんが全開状態であることを目の当たりにし、駆けつけて来た皆さんにとって格好の米木Welcome Back Liveになったと思われる。我らの安堵は普段の枠をハミ出してしまって喜ばしい限りだ。巷間の知らせではアチコチで療養前のような「米木争奪戦」が活況を呈しているらしい。気懸りではあるが、これはミュージシャンにとって喜ばしい限りのことなのだろう。米木さんの自愛を祈りたい。
6.25 鹿川暁弓・米木康志 DUO
米木さんがWoodに持ち替えるというので覗いてみた。3、4年聴いていなかったので、あの太い味わいを満喫出来て我が意を得たりだ。演奏経過については割愛させて頂くが、一言添えておこう。終演後、鹿川は米木さんと何やら話し込んでいた。盗聴しそびれたが断片を繋ぎ合わせると、鹿川の良さに触れつつ課題について助言があったのだと推測する。「やれることを全部やろうとしなくていいんだよ」というようなことが聞こえてきた。鹿川は先月の21周年と今日と授業料免除の高等レッスンを受けたことになる。そこで浮いたレッスン料の分け前はLIVE演奏の成果で払って貰おうか。鹿ちゃん、シカと伝えておくね。(M・Flanagan)