
平倉初音(p)伊藤勇司(b)柳沼祐育(ds)
「頼んだぞ」。 レイジーでは安定的に来演回数を重ねると宿題を課される。これは特別推薦のメンバーを連れてくることであって、決まってウーロンやジンジャーをオーダーするような軽い選択ではない。柳沼の人気者生命が懸かる人選注文である。そこで白羽の矢を立てられたのが、平倉と伊藤である。柳沼に限ってレンジでチンのような即席技に手を出さないだろうという確信はあった。筆者の主たる情報源はレイジーのLIVEなので、初めて聴くこの二人についての予備知識がない。逆にそのことによって、本腰を入れて聴く体勢が整うのである。まずはベース。伊藤は楽器がもっと鳴らせと要求しているかのようにゴツいフレーズを連発する。これがライブならではの空気感を増長させ、ビシビシ太いメッセージが伝わってくる。こうして伊藤の演奏は十分腑に落ちるところとなって行った。いま彼ら30代のベース実力者層は厚く、それ故にジャズは細ること知らずだと思わせる。伊藤は確実にその一翼を担っていると言ってよい。そしてリーダーの平倉。最初はモンクで始まったが、オリジナルが採り上げられて行くにつれ、彼女の演奏特性に気づいていく。自作曲を手慣れた”一丁上がり~”にしておらず、探って探って曲の核心を突いて行くというように演奏している。この探りの部分は非常に重要であると感じている。こうした思索的一面とは別に、思いっきりノリまくるところも大きな聴きどころをなしている。「アタシ小料理も得意だけど喧嘩だって負けないわ」という演奏なのである。割と綺麗に纏める派を想像していたのだが、全く違っていた。一つ加えると、バラードが素晴らしく大いに感心させられた。彼女のキャリアについてはよく知らないが、この大きな拾いものは、交番に届けて人手に返したくないと思わせるものだった。トリオとしての躍動感も出色で、レイジーが押す”まだ見ぬ才能シリーズ”は、ここでまた成功率を高めた。かくして柳沼は難関レイジー人材派遣検定を突破したのである。今ごろはヤレヤレのアクビをしているだろうが、それは許そう。演奏曲は「I Mean You」、「Spirale」、「Waltz For Monk」、「But Beautiful」、「Sea Raccoon」、「Mysterious Apple」、「Triste」、「Poor Butterfly」、「Moon And Venus」、「Things Ain’t What They Used To Be」。
1日置いてNAMIさんと平倉のDUOを覗いてみた。平倉の演奏姿勢をたっぷりと確認できたとだけ言っておく。僅か二日ではあったが、手持ちの籠が溢れる収穫祭であった。(M・Flanagan)
