私、プロレスの味方です

まだテレビが普及していない55年位前、最高の楽しみは金曜日の8時のプロレス中継だった。近所にいる伯父の家に毎週プロレス中継を見に行っていた。力道山がルーテーズやブラッシーを空手チョツプでマットに沈めるのを嬉々として見ていた。僕以外は皆大人で「アメリカやっつけろ」とかいう声援も聞こえた。まだ戦争に負けたという事実が納得できないお大人が高度成長期になりつつある恩恵で購入できたテレビを見ながら韓国籍の力道山がアメリカのレスラーをやっつけるのを日本人として楽しみにしているねじ曲がった時代でもあった。スポンーは三菱電機で番組は巨大な三菱のロゴ円形広告塔を映し出すところから始まる。レスラーが紹介されると紙吹雪がマットに舞い散る。それを三菱の掃除機が残さず吸い上げる。大人たちは僕に「あれは、三菱の掃除機を買わせるためなんだぞ」と教えてくれた。少年は掃除機など興味ないので「ふーん」と答えた。東京勤務だった時事務所は銀座2丁目にあっていわゆる銀ブラをしている時あの三菱の広告塔を見つけた。ここにあったんだとしばらく立ち尽くした。急に力道山のことを思い出し、暴漢に刺された場所ラテンクォータというキャバレーを探そうと思った。つたない記憶を頼りに確か銀座松屋の近くのはず・・・・・・と路地をくまなく歩いたが見つけることはできなかった。僕がプロレスの味方だった頃の話だ。今も敵ではない。なにせ上は格闘技居酒屋で礼儀正しレスラーの人がオーナーだ。ご近所付き合いもある。下手なことは言えない。
タイトルを書いたら色々なことが浮かんできてイントロが長くなってしまった。プロレスのことを書きたかったわけではない。テーマは短い。村松友視の「私、プロレスの味方です」の中に次の一節がある
「ちゃんと見る者は、ちゃんと戦う者とは完全に互角である」音楽に置き換えてみる
「ちゃんと聴く者は、ちゃんと演奏する者と完全に互角である」
そう信じて言葉と音の分水嶺を探すべく格闘するのである。ちゃんと聴いていない人の言葉はすぐわかる。勿論語彙力のことを言ってるわけではない。