Eearl”Fatha”Hines 『Here Comes』

名盤・迷盤・想い出盤
 最近はレコードブーム再燃というようなことを聞く。アメリカなどで地道にアナログ・レコードが支持されてきたのとは対照的に、我が国のCD普及が世界的に先頭を切っていたことへの反動であるかも知れない。ところで、かつては中古レコード店が活況を呈していて、名盤のみならず掘り出しモノにおいて、新品販売店より圧倒的な優位を握っていた。この中古品だが、その値段決めについて少し不可解な思いがある。日本盤には元々ジャケットに”帯”なるものが付いていて、同程度の盤質ならば”帯”ありの方が高値なのだ。これはオモチャの鑑定で箱の有る無しで値打ちが大きく変わるのと同様の基準だ。筆者は”帯”が付いていても外してしまうので、当然”帯”なしを買っていた。今回の『Here Comes』はたまたま”帯”付きだ。見開きのアルバムを開くと挟まっていたのだ。しかも、”来日記念特別新譜” という細帯まであるではないか。悪戯して”帯”を付けてみたが、ジャケットの3分の1ぐらい覆ってしまう。再び取りはずした。さて、このレコードについてはサイド・メン買いした。リチード・デイビス(b)とエルビン・ジョーンズ(ds)だ。アール・ハインズについては、Jazzピアノの父と言われているくらいは知ってはいても、ベース、ドラムスの二人に比べて古典という思いがあったので”まっ、いっかぁ”だったように思う。さてどうだ。A面は和みのある演奏で固められている。これは下ごしらえだ。B面の「スタンレー・スティーマー」に突入すると、得も言われぬスイング感に晒されることになる。三者が同一線上に並んでノリまくっているのだ。サイド・メン買いは誤りではなかった。このサイドの二人は「父」”Fatha”ハインズに尊敬の念こそあれ、プレイに遠慮は無かったのだ。今一度例の”帯”を見ると2000円と印字されている。間違いなくそれ以上の値段だったと思う。中古店のプレイにも遠慮は無いのである。
(Jazz放談員)

master’s comment notice
1920年代からルイ・アームストロングと活動しているアール・ハインズがコルトレーンを経験している当時最高のリズムセクションと言われた二人と共演したアルバムという事で購入した記憶が有る。牛さんのコメントにあるようにthe stanley steamer と2曲目のBernie’s tuneの流れが素晴らしい。ジヤズは時代によって表現方法が変化するが根底に流れているものが共通していれば何時でも会話が出来る音楽であると再認識させてくれるアルバムである。
lazyを開店するずいぶん前にR.ディビスのリーダーコンサートを主催する機会が有った。まず聞きたいことは5スポットでのドルフィー、ブッカー・リトルと共演した伝説のライブの事でありこのアルバムの事は聴きそびれてしまった。