ハッサーン イブアリ


ハサーンのサード は23年12月に出てるから多くの人は今年聴くことになったのだろうが僕は11月になってやっと聴いた 何を書いてるのかと言うと歴史が変わったタイミングだからだ ちょっと大袈裟だが60年も50年も経ってから発掘された音源がジャズの歴史を書き換えるなんてあったのだろうか? 先のメタフィジックスの後でソロの2枚組が出て今度のはトリオデュオソロの言わば寄せ集めのレアトラック集でしかない しかしもうハサーンが失われた大きな才能である事は隠れも無い事実となった 前の文章を書いてた時 僕は大きな勘違いをしていて10年ほど時代を前に間違ってた 65年はモンクはCBSでトレーンはアセンションをレコーディング中と言う年なのだ ここでトレーンの名を出したのは偶然でなくメタフィジックスにはトゥルートレーンと言うナンバーがあるがそれはブルートレーンにかけてるじゃないかとか思った と言うのはトレーンがシーツ・オブ・サウンドの発想を得たのはハサーンとの50年代のセッションからだと言う話は前から語られてた伝説だ メタフィジックスのアートデイビスは直後すぐのアセンションの録音にも参加している(そして今盤のベースはあのヘンリーグライムスである)  オープニングのオールモストライクミーを聴いて僕はCDを一度止めた それだけで吹き飛ばされてしまったのだ これはアバンギャルドな響きを帯びたアブストラクトだがトルネードストレートだ
自分の勘違いに気がついたのだがハサーンはモンクもしっかり研究している(多分) リバーサイドのモンクだろう ほとんどのピアニストはモンクに絡むと2級品のモンク商品を作ってしまう ほら私にも演れるンです みたいなヤツだ それに対してハサーンはアトランティックでトラブらなければCBSに移って長期のデクレッシェンドでマンネリになっていったモンクに代わる存在になっていったかも知れないと夢想させる 彼はモンクナンバーを2枚組のソロの中で一曲だけ取り上げてる それは録音がライブの海賊盤的プライベート録音だからこそでスタジオ録音では無い hope so elmo(Mローチトリオ盤)という曲があるくらいでハサーンのオリジンはエルモ・ホープである エルモはバドの幼馴染でピアノとドラッグを一緒学んで若死にした年迄ほとんど一緒だ、バドみたいに派手でなくバドのように追従者が一派を作る様なタイプでない(作曲家としては名曲を作っててビルエバンスとかが取り上げてる)多分僕が分からなかっただけなのだろうが印象的では無かった それもあってハサーンのMローチトリオのレコードもドラムがうるさいなぁ ピアノのハッサンはアラブ系だからメロディセンスがユニークなのだろう とか思ってスルーしてしまった あっそうだ僕はそのピアニストをよくジャズを知らない音楽家だと思っていたのだろう 事実は逆だったわけである 彼はウォーキングディクショナリでそこには未だ誰も知らない事も書かれてる本だった  そういうことは例えばモンクみたいな天才にしか可能じゃない  またハサーンにはモンク並みの奇行も多々あったらしい その種の話はマネができる物ではない
 歴史の禁じ手のifばかりだが引きこもって作曲ばかりしてた時代に家で火事が起きなければOポープ達によって復活する目もあり得たかも知れない モンクとばかり比べて何だが彼もキャバレーカードを無くしてピアノの中にこもってた時代の作曲がその後を作りあげたと思う
オールモストライクミーを僕は とても他人とはおもえない と訳してる(ポープのファーストのタイトルナンバーでもある)
音楽やアート世界を旅する時のひとつのシグナルとなる感覚としていた
 ハッサーン イブン アリの様な人はざらにいるものじゃ無い。 
BY 山の実