昭和100年映画祭

意図的に見ようと思ったわけではないが時々無料映画の情報が表示される。それらは日本映画全盛のころの日活、東映の作品群である。意識したことはないが今年は昭和100年の年にあたる。酒屋さんから貰ったカレンダーにはそう書いてある。それを記念して映画会社の垣根を取っ払った映画祭が東京丸の内の某映画館で開催されていてそのプロモーションが目的の無料動画配信の様だ。全42作5月までかけて順次公開される。ラインアップを眺めてみると30作は見たことが有る作品であった。スマホの小さい画面で映画を見て意味が有るのかと思いながらもついつい吉永小百合の名前につられて「赤い蕾と白い花」という映画を見てしまった。吉永小百合と浜田光夫のゴールデンコンビによる青春映画である。1962年の作品で当時の空気感は分かるが自分がいた世界とは明らかに違う。吉永小百合の家は多分田園調布にある。母親役の高峰三枝子は家で和服を着ているしお手伝いさんもいる。我々庶民はこういう映画を見ながら近い将来来るであろう豊かな生活を夢見て頑張っていたのだと思う。テレビが家に来たのは東京オリンピックの時である。それまでの最高の娯楽は映画で親に連れられてよく見に行っていた。だがアニメや怪獣物は見た記憶がない。母親の趣味で石原裕二郎主演の「嵐を呼ぶ男」や「銀座の恋の物語」を見せられていた。丸井百貨店の屋上にも安い映画館が有ってそこでは洋画が上映されていた。小学生低学年の時見せられたイタリアリアリズムの映画「自転車泥棒」「鉄道員」は暗くて、つまらなくてそれで覚えている。子供心には綺麗で元気な吉永小百合姉さんの方に100倍惹かれるのである。
映画のビデオテープが何百本かある。ある時これ以上増やさないぞ・・・と決めたので珠玉の何百本の筈である。ところが再生装置の方が寿命で見れなくなってしまった。テープは居間の片隅で指名されないホステスの様にお茶を挽いている。2025/4/13