松島啓之(tp)岡 淳(ts)本山禎朗(p)柳 真也(b)原 大力(ds)
松島と岡そして原は、若き修行時代のバークリーで被っていて、帰国後はよく顔合わせをしていたとのことである。その頃から時を経てこの3人が顔を揃えるのは随分久しいとのことらしい。因みに東京から来るミュージシャンの話によると、ホームでの共演機会がなくても、ここLBで再会を果たすことがままあるらしい。言わばレア盤のようなライブを私たちは目の前にする機会を得ているということができる。今回もそのケースと言ってよく、LBライブ史上、Saxではまだ見ぬ最後の大者の一人というべき岡の参加という貴重な編成となっている。終演時点から物申すのも妙ではあるが、たまたま横にいた柳が「バップ、いっスね」とはしゃぎ加減の笑みをもって一言発した。彼が初めて演奏したというモブレーの「Rall Call」のことを言っているのだろう。筆者もライブでこの曲を初めて聴いた。突き抜けていく松島と悠然とウォームな岡のブレンドは、「バップ、いっスね」で勝負ありだ。20世紀半ばの黄金期に敬意を払うかの熱演である。開演に時に巻き戻そう。オープニングは「You Are My Everything」、多分松島の選曲だろう。トランペットが輝きに輝く。2曲目は岡のペンなる「Only One」、岡によれば“My One&Only Love”のチェンジを拝借しつつ原曲の“Only”と“One”を抜き出してタイトルにしたそうである。後で原が「リハ演らんかったらヤバかった」というナーバスな曲である。バラード指定席の3曲目は「Darn That Dream」、何故か最近この曲を最近よく耳にする。そして4曲目は先の「Rall Call」だ。2回目は如何にもハンコックらしい曲想の「Driftin’」で開始。続いて松島の「Treasure」、何度か聴いて耳に焼きついてしまった。3曲目は「If You Could See Me Now」、どういう訳かこの曲を聴くとH・メリルの歌唱を思い出してしまう。最後はK・ドーハムの名作「Lotus Blossom」に汗が飛んだ。喝采に乗ってアンコールは「I’ve Never Been In Love Before」。岡の参加は効き目十分のGroovin’ High!。
後日、札幌は記録的大雪となったので、その前にこのライブを聴けたのは実に幸運であった。一方、ドラムを務めた原にとって後に控えた3Daysが直撃されたのは不運としか言いようがない。歩道も閉ざされる中、意を決して中日のLa Coda with原を覗いてみた。原曰くバッチ(Bach)やチョピン(Chopin)など普段は演らない楽曲においても、原ワールドは至って揺るぎない。さすがの原師匠である。なお、本文に一度も触れていない本山については、別の機会に譲ることにしたい。
(M・Flanagan)