松原慎之介(as)布施音人(p)高橋 陸(b)中村海斗(ds)
この若者たちの発散するエネルギーに羨ましさを感じてしまう。ウズウズしながら出番を待っているような気合に満ちた雰囲気はそのまま演奏に直結していく。余計なサービスを排し、思いの丈やろうとする意志のみが一灯照らしているといった具合だ。その演奏は殆ど途切れることなく突き進む。このノンストップ・エキスプレスの乗り心地は中々のものだ。場内は発車してから乗客が増え、何時の間にか満席になっていた。さて、この4人を個別には聴いていたので力量は確認済みであった。これがひと纏まりになると、果たしてどんな景色を提供してくれるだろうか。言ってしまえば、相当に熱っぽい景色だ。筆者が注目していたのは、熱っぽさの質が各自異なっているところである。仮に炎が、白色から赤色の幅に納まるとするならば、布施はやや白寄りで松原と海斗は赤寄り、高橋は中間色付近で両脇に対応していると言った感じになる。こういう個々の陣取り位置が、彼らのサウンドを同質一辺倒になるのを食い止め、多彩な展開を可能にしているのだと思う。これがSS席から定点観測した印象である。演奏曲はオリジナルで占められている。彼らにとってオリジナルとは、新時代のジャズを希求しようとする突破口として想定されているのだろう。それらの曲を通じて、高速up downフレーズ然り徐行フレーズ然り、アイディアに溢れるものとなっていた。そこに危な気ないことに従う気配は全くない。これは今やれることを目いっぱいやり切るのみと主張しているに等しい。だがこの主張は波乱を敵に回すこともある。何でも彼らの前向きさは、勢い余って小突き合いの場外乱闘に発展することもあったと聞く。この頑なさ、濁っていないなぁ、ウン。演奏曲は「Black Dawn(海斗)」、「Autumnal Mood(布施)」、「Myo(布施)」、「Little Warm Winter」(海斗)、「Dr. Blythe(海斗)」、「Lapsed Away(布施)」、「Beyond Solstice(布施)」、「High Ace(慎之介)」、アンコールはエリントン「I Got It Bad And That Ain’t Good」。
自称ハンサム・ボーイ のリーダー慎之介は少年時代からレイジーと縁がある。LIVEを聴いて向上心を高めるために度々訪れていたのだ。その傍らシット・インを狙ってもいた。ここの鬼軍曹はそれを容易に受け入れることはなく、筆者もその様子を何度か目撃している。その少年が今や新世代の最前線に立っているのは感慨ひとしおである。今回その最前線を見せつけられ通して気分は上々となった。真剣に喰い入っていたのだろう、終演後は少々ヘトヘトだ。 気合を入れ直さねばいかん。
なお、メンバー各自、またレイジーで演りたがっているようである。ブッキング成立を期す。
(M.Flanagan)