Gary Peacock「Tales Of Another」

名盤・迷盤・想い出盤
このレコードの日本盤タイトルは『ピーコック=キース=ディジョネット”ECM”』というものである。知られてるとおりECMというのはレーベル名称である。リリース当時このレーベルはジャズ的な泥臭さをを却下した透明感のある録音を特徴の一つとし、キース・ジャレットのソロを含む諸作を発表して、話題になっていたドイツ発の振興勢力であった。日本盤が「Tales Of Another」を無許可でこのタイトルにしたのなら反則であり、許可を得ていたのなら販促である。ただ、ゲイリーの意向は問われなかった可能性はあると思う。この辺りは後味が良くないが、内容は全く別である。筆者はキースの三枚組『ソロ・コンサート』を気に入っていて、その延長でこのアルバムを買い求めたと記憶している。キースの天才を疑う者はいないと思うが、’70年代に率いていたアメリカン・カルテットでは、メンバーの自由を優先させていたのか、リーダーとしての統率に無頓着であったのか分からないが、集団をまとめる面での天才は少し怪しいように思う。今回紹介する「Tales Of Another」は、リーダーがゲイリー・ピーコックであるところを注視しておくとよい。しつこく言うと、キース仕切りではないことによって、三者の対等な関係を極限まで引き上げることが可能となったのと思わざるを得ない。かくして尋常ならざる緊張感が、最後まで途切れることのない作品が出現してしまったのだと言えよう。このトリオは後に稀にみる長期活動を行うことになるスタンダーズへと結実して行く。スタンダーズの作品は秀逸なもの揃いであるが、筆者はこの「Tales Of Another」を上位に置く。更にこのアルバムを想い出深くしているのは、新譜をリアル・タイムで聴き始めた時期と重なっていることだ。何せ所持枚数が少なかったので記憶に鮮やかだ。今回取り出してみると、相当聴き込んだとみえてチリチリが結構入っている。チリチリ・バンバンと言っちゃ失礼か。デジタル製品は不老であるが、アナログは我とともに年を取っているのだと思う。さあ纏めよう、このアルバムには収められていなが、”It’s Easy To Remember(思い出すのはた易いことだよ)”というスタンダード曲がある。その曲の歌詞の中でこれに続くのは”But So Hard To Forget”(だけど忘れるのは難しいことさ)となっている。これは、そんなアルバムの1枚である。
(Jazz放談員)

master’s comment notice
前回取り上げてくれた「money jungle」をライブ終了後かけていた。遠目にジヤケットを見たミュージシャンが「monkey jungle」と言った。「このアルバム知らんのかい」とツッコミを入れたくなるが間違いとしてはかなり面白い。密林と言えば猿である・・・・。恥ずかしそうに終電で帰っていった。引き止めなかった。去る者は追わずである。
今回の「Tales Of Another」聴き直そうと捜したがゲーリーの所にもキースの所にもない。groovyからlazyに引っ越しする時何処かに紛れたのだ。こうなると多分一生聴けないことになりそうだ。ここに張りつめている緊張感の源泉はG・ピーッコックがA・アイラーと録音した「spiritual unity」ではなかったのかと思っている。フリーでやった緊張感をインで表現したらこうなるのでは・・・・
何年前の事かは忘れたがK・ジャレットトリオのコンサートの後今は無きビードロというライブハウスに行った。そこにG・ピーコックとJ・デジョネットが来た。二人でキースの奏法について話していた。デジョネットがピアノを弾いてゲーリーに意見を聞いていた。並みのプロよりピアノがうまい。