日曜の夜村上春樹がDJを務める「村上RADIO」と言うラジオ番組がある。今週の特集は「bubble-gum music」。バブルガムブラザーズと言うグループもあるので何となく想像はつくがこういうジャンルがあることを初めて知った。68年から70年初期に流行したキャッチーなメロディ。シンプルなコード、能天気な歌詞のポッソングの総称だ。そのほとんどはプロデューサーのなんとかさんとシンガーソングライターのなんとかさんが制作したものであるらしい。こういうところでは知ったかぶりはしない。かかる曲は聴いたことが有るし、グループ名も何グループかは知っている。レコードは一枚も持ってはいない。だが知っている。と言う事はかなりヒットしたと言う事である。時代はベトナム戦争があり大学紛争があり、激動の時代である。音楽界はジミヘンやドアーズやツェツペリンなどアート志向の音楽が主流だと思っていた。ところがヒットしていたのはバブルガムミュージックだったのである。その落差に改めて驚く。一曲目がかかった。「何とか」の「何とか」と言う曲であった。村上春樹は曲紹介で何度も念をおす。「本当に軽薄な曲ですから・・・」どう考えてもこの辺の音楽が重要と考えてかけているとは思えない。1910フルーツガムカンパニー、アーチーズ、オハイオエクスプレス、50年以上前の音楽であるがよく覚えている。これらのグループは山谷の日雇いの様にかき集められたスタジオミュージシャンがフライドポテトを上げるように『一丁上がり』とヒット曲を量産していく。メガヒットしたグループはそのままレギュラーグループと化しワールドツァーにも駆り出される。1910フルーツガムカンパニーも来日したらしい。対バンはピンクフロイド。舌平目のムニエルに食べ放題のキャベツが付いてくるようなひどい組み合わせだ。いくら激動の時代とは言え「まあまあ、あまり肩ひじ張らないで楽しくやりましょうや」という人種は少なからず居ると言う事である。これはいい悪ではなく。事実である。本当に能天気な歌詞の曲があった。浜辺に座って綺麗な姉ちゃんの胸と尻を見ていりゃ最高さ・・・その時何万キロ離れた海岸には海兵隊が上陸している。村上春樹はジヤズの店を経営していたのでジャズは詳しい。一部のロックも詳しい。クラシックも詳しい。この種のポップス音楽に詳しいのは学生時代レコード店でバイトをしていたことによるらしい。
ロシアがウクライナを進行している時に何故「バブルガムミュージック」なのか。いつの時代も能天気な音楽は存在する。それは音楽における民主主義と呼んでよい。それとたまには気軽な音楽で気晴らしようよ。二つの意味で春樹さんは「バブルガムミュージック」を選んだのではと思っている