フランスの名優ジャンルイ・トランテニァンが亡くなった。91歳であった。ダバダ・シャバダバダ・シャバダバダの主題歌で始まる「男と女」が代表作である。この映画が札幌に来た時、主演のジャンルイ・トランテニァンとアヌーク・エーメの巨大看板が須貝劇場にかかっていた。キャッチコピーは今でもよく覚えている。「この映画を恋人同士で見たら帰りに貴方たちは必ず接吻をするでしょう」とあった。多分中学1年生であった吉田少年はもう少し大きくなったら必ずこの映画を二人で見て接吻とやらを経験して見るのだと誓いを立てたのだった。それから苦節…年。クロード・ルルーシュ監督の映像が美しく大人の恋物語が素敵だった。印象に残っているセリフがある。ホテルのレストランで二人で食事をする場面だ。オーダーを取り終わって下がるギャルソンを呼び戻す。「あと何を」「部屋を一つ」こんなしゃれたやり取りをしてみたいものだ。頼んだ料理も一品だけでフランス料理をオードブルから始まり魚頼んで、肉頼んで白ワイン頼んで赤ワイン頼んで・・・と思っていたが裏切られた。
「男と女Ⅱ」も制作された。1作が当たったので柳の下の泥鰌を狙ったような低劣なものではない。結局一緒にならなかった二人だが人生のある部分で微妙に繋がっている。ジャンルイ・トランテニァンには若い彼女がいる。そして彼女はアヌークエーメに嫉妬しジャンルイ・トランテニァンと砂漠で心中しようとする。女心の浅はかさと砂漠の残酷さがつづら折りになって描写されてる。映像がまた美しい。二人を必死で探すアヌークエーメ・・・。
処女作から53年後「男と女Ⅲ 人生最良の日々」が撮られた。ジャンルイ・トランテニァンは認知症を患い施設に入っている。彼の息子がアヌークエーメを探し出し連れてくる。だが昔の彼女だとは分からない。だが素敵なのはそこからだ。また恋をし始めるのである。「まだ君に恋してる」坂本冬美が流れ始める。嘘である。例のダバダ・シャバダバダ・シャバダバダ・ダバダバダ・・・が流れている。恋は若者の特権ではない。年老いても二人が素敵に描かれている。フランスの文化の違いを感ずる。
クロード・ルルーシュ監督は自分の作品の所謂本歌取りのような作品を良く作る。「男と女の詩」という作品がある。これは「男と女」3作とは直接は関係ない。宝石強盗を働いたリノベンチュラが刑務所で服役している。恩赦がでて出所し昔の彼女に会いに行くと言う設定である。だがこの恩赦は未解決の宝石強盗事件を解決するためのおとり捜査なのである。娯楽の映画鑑賞で刑務所で「男と女」を見ている時呼び出され恩赦を告げられる。刑務所から出た時にはあの音楽が頭から離れない。
娑婆・ダバダ娑婆ダバダ