街角情報室vol9 他人の空似

店から出て買い物に行くときのことである。S絵が前を横切っていく。声をかけようか迷よっていると
ちらっとこちらを見ると矛先変えこちらに向かってくる。両手を腰のあたりで振っている。あれそんなキャラだったかといぶかったが僕もそれに応えるべく両手を激しく振った。ハリウッド映画であれば再開を喜ぶ恋人同士のように抱き合うところだ。近づいてくると視力の衰えた僕でもあれなんか違うと気づいた。だいぶ若い。フィル・ウッズのソロと思って聴いていたが良く聴くとジーン・クィルだったという感覚に近い。手を振っている僕の脇を通り過ぎた。「しばらくぶり」と再会を祝う会話が聞こえた。気配は全く感じなかったが後ろに誰かいたのだ。
「今の人誰」
「知らない」
滅茶苦茶かっこ悪い