LUNAによると、9月は10本のLIVEが流れたのだという。本文に目を置く各位はご承知のことと思うが、恒例となっているこの月の北海道ツアー(本編)もその流れに飲み込まれたのである。従って番外編も行き場を失うはずであったが、尻尾だけは再生することとなった。これはLUNAの女気を結晶させた本編なき変異型LIVEのドキュメントである。
9.14 Unpluged Rock Again LUNA(Vo)町田拓哉(g、Vo)古館賢治(g、Vo)
今年の4月、これまで積み重ねてきたRock-Loud路線がショパンの事情によりUnplugedに切り替わったが、予想に増して好評を博したことは記憶に新しい。そしてその第2弾がここに実現したのである。前回は初競演とは思えぬ調和のとれたパフォーマンスを残していったが、今回は夕暮れに霞む“Loud”を尻目に“Unpluged”は満を持して綿密に電子連絡を交換し合ったとのことである。演奏曲は、「Long train running」(ドゥービー・ブラザーズ)、「NewYork state of mind」(B・ジョエル)、「Sunshine of your love」(クリーム)、「Old love」(クラプトン)、「Little wing」(ジミヘン)、「Forever young」(ディラン)、「Redemption song」(B・マーリー)、「Knocking on heaven’s dooe」(ディラン)、「The waight」(ザ・バンド)、「Imagine」(レノン)、「Nowhere man」(ザ・ビートルズ)、「Natural woman」(A・フランクリン)、「You’ve gatta friend」(k・キング)。個人的には1970年代後半くらいまでしかRockを聴いていないが、本日の演目の多くをリアルタイムで聴いていた。ということは、それらの曲は風雪に耐えて来たということができる。ただオリジナルの大半がソリッドのギターであったのに対し、“Unpluged”はアコギなので、異なった趣へと導いてくれる。しかも腕前を徒に見せびらかせない大人の立ち振る舞いが三者のバランスを絶妙なものとしていて、ジックリと聞いていられるのだ。加えてハモりを大の好物とするLUNAの期待に応えて余りある野郎どもの喉が何とも味わい深い。“洗練”という言い方が似合うこのコラボはまた有りそうであり、そう有って欲しいものだ。
9.15 日本の歌ブラジルの歌
LUNA(Vo)(Vo)古館賢治(g、Vo)板橋夏美(tb,Vo)
標題は前宣伝のコピーだが、全体としては“ほぼブラジル”である。まずはそれらの曲目から見ておこう。「晩歌」、「folas secas」、「corcovado」、「samurai」、「時よ」、「felicidade」「beijo partido」、「intil pasagem」、「romaria」、「行かないで」、「equilibrista」、「四季」、「panta de areia」、「chega de saudade」。ブラジルもの精通している人は、ニンマリするのだろうが、筆者にはほとんど何のことか分からない。いくつかは聴いたことがあるような気がする。だが知っているか知らないかを基準にすると音楽は部分化されて広がりようがない。そもそも音楽が世界化するのは、何度も引用されるエリントンの「音楽には好ましいものとそうでないものの二種類しかない」のであって、これは普遍的認識といっていい。従って知らないことに臆することはない。エリントンの音楽観を持ち出したのには理由がある。9月3日の本編は幻となってしまったが、これが実現していたら、エリントン特集だったのである。このこと自体は残念と言うより他ないが、私たちは何であっても聴いている間はその曲その歌を楽しんでいるだけでよいと思うのだ。ただ今回楽しむことを可能にしたのは、知らないもの伝えきるLUNAの力量によるものと言い切っておくが、それをサポートした女殺しの古館Voiceと添い寝されているような板橋の心地よい音色がこの日を大いに盛り立てていたのを忘れるべきではない。
翌日、所有しているボサノバもののなかから3枚ほど立て続けに聴いた。持っていても曲名は殆ど知らないことに気付かされたが、LIVEで助走がついているのですぅっと入ってくるのを感じた。ところがである、期せずして次の1枚はコルトレーンのヴィレッジバンガード・ライブを選んでしまった。音楽はどこからも繋がってしまうといという真実の前では、一貫性のない選択など些細なことである。やはり私たちはエリントンの音楽観から逃れることは出来ない。
最後に複数の実行犯が絡んだらしいハプニングについて伝えておきたい。LUNAはこの10日ほど前に迎えた誕生日を一人三角座りしながら夜に涙をぬぐっていたそうである。二日目のセカンド1曲目の最中に、何処からか不規則にカチッカチッという音が聞こえてきた。この曲の目終了に合わせてそれは起こったのだ。バースデイ・ケーキの進呈だ。年の数を大きく下回るロウソクの本数ではあったが、点火に手こずったそのカチッカチッが今も耳に残っている。
(M・Flanagan)