本山禎朗(p)米木康志(b)伊藤宏樹(ds)+山田丈造(tp)
札幌は連続真夏日の観測記録を更新する熱波の只中にあった。しかも個人の話で恐縮だが、ワクチン摂取により少々熱っぽく頭がフワ~ットしている始末である。かかる事情下とはいえ、例年と異なり今回の米木さんが本年最初で最後ということなので、奮い立たねばならない。加えて丈造の参加で真夏の夜のジャズはあらゆる熱を好作用に導くだろうと期待が膨らんでいった。そしてスタート時間の繰り上げを余儀なくされているなか、リーダーの本山が時間の制約に配慮して簡潔に開演宣言を行ったのだった。
1曲目はガーシュウィンの「エンブレイサブル・ユー」、これは熱さ求めて前のめりになるのを戒めるような端正で落ち着いた演奏。2曲目は米木さんが今年リリースしたアルバム“SIRIUS”からハロルド・ランドの「ワールド・ピース」、終始ベースのビートに乗っかって各自が開放的なプレイを展開し、ややアクの強い曲を一般人の耳にスンナリ入ってくるように仕上げられていて、聴き応えがあった。次は数多くの名演・名唱がのこされている「アイ・フォーリン・ラブ・トゥー・イージリー」、丈造のバラード感性が格段に研ぎ澄まされていることを印象づけるものだ。4曲目はE・マルサリスの「スインギン・アット・ザ・ヘブン」、多くのライブがそうであるように、終盤の聴かせどころは渾然一体感を流し込む仕様である。そしてその通りとなったのである。締めくくりは「ストレイト・ノー・チェイサー」、ぜい肉なし。
ご存知だろうか、1960年代にフィフス・ディメンションという歌のグループがあった。彼らには“ビートでジャンプ”という割と知られたナンバーがある。“ビート”から煩わしい濁点を取っちまえばスッキリするだろうと他愛ないことを考えていたが、演奏者・客ともども熱さ満開の“ヒートでジャンプ”に行き着いてしまったと言える。
なお、冒頭に述べたとおり、今年の米木さんは聴き納めとなるので、あと2daysを覗かせて頂いた。鹿川暁弓3とNate Renner3である。両者とも高鳴る緊張感を露わにすることなく一身に演奏する素振りが見て取れ、持ち味が十分引き出されていたように思う。三夜を通じて攻めの姿勢を緩めることのない米木さんに改めて頷かさせられた。そこには生き続けるジャズとは何かという問いが漂っていた。
(M・Flanagan)