6) Gateway
エルビン+トニー=がジャックディジョネットだ。と誰が言ったか知らないが的を得た言葉です。本田珠也のジャズはこうなんだ!と思っていたらもう既にやっていたのがジャックディジョネットだった。いやあ、とにかく聴いた。聴きまくった。当然の如くチャールロイドを初めエレクトリックマイルスからジャックディジョネットが演奏する全て(ブートも含め)を網羅したいが為にコンプリートする事を決意した。このアルバムや特にECMなどで聴かれるジャックディジョネットのドラミングが、現在も全てに於いて影響を受けている事を断言する。このアルバムとパットメセニーの80/81はCDの盤面が(擦れないけど)擦り切れるほど聴きました。このトリオの凄さは3人がバラバラに演奏しても各々のイタリティーで解決してしまうという、ある種力技もあるけど、三人三様別々の道を辿ってもいつかはお互い帰ってくる。僕にとってジャズ演奏の基本てこれじゃないかな?と思うのです。人に依存しないで独立しているという事。Gateway Trioとも言うが元々のリーダーはギターのJohn Abercrombieで、1996年の初来日の時に聴きに行った。しかしJohnの死によってもうこの3人の演奏は永遠に聴く事は出来なくなった。非常に残念である。
7) Rage Against The Machine / Evil Empire
1996年に初めてNYに行ったのだが、それまでずっとジャズばっかり聴いていて多分自分の中でロックは終わったと感じていたのだが、宿泊していた部屋のテレビから流れたこのアルバムのBulls on Paradeに本当にショックを受けた。ロックは終わってなかったのだ。自分もこんなバンドをやってみたいと思いその後PLANET Xを結成。1曲目のLoudMouthは彼らのオマージュ。レイジはどこまでも硬派で言動も政治的でその辺のチャラチャラしたバンドとは雲泥の差があるが、それ故にメンバーの(政治的)方向性や発言などによって対立し、解散はしていないが活動無期限停止中。しかしいつ聴いてもヘヴィでリフもよくいつかこんなバンドで叩いて見たいと思う憧れの存在だ。
8) Benevento Russo Duo / Play Pause Stop
2000年に初リーダ作「Planet X」を発表した頃は貪欲に新しい音楽を求めていた。この頃やっと家にPCがやって来てインターネットに繋ぎ海外の音楽情報も手に入れた。今でもあまり有名じゃないが、その頃に出会った最高に大好きなドラマーがJoe Russo。NY出身でNYアンダーグランドジャムバンドの一つだったが、オリジナルも演奏しつつLedZeppelinやBlack Sabbathなどのコピーをやったりしてて面白かった。2004年に初来日してちょっと仲良くなって、2005年にはフジロックに出演した時は最前列で聴いてベロベロに酔った勢いでフェンスをよじ登って楽屋に乱入! 2006年にはNYのBowery Ballroomでも聴いたな。とても思い出深いバンド。因みに彼らの初期のレパートリーにLedZeppelinのFour Sticksを演奏していて、それを演奏したいが為にZEK3を結成したと言うのは一つの理由として間違いない。
9) Africa : The Sound & Music of the Congo
NYのイカれたピアニスト、プーさんこと菊地雅章さんと活動している頃に幾つかののDATテープを頂いた事がある。それはプーさんが僕らに「これは聴いた方が良い」というプーさん自身がセレクトした貴重な音源。一つはジャズでエリントンとかバドパウエルとかシナトラやマイルスやコルトレーンまで幅広くセレクト。もう一つはクラシックや現代音楽などで、メシアンやリゲティやストラヴィンスキーなどこれも幅広く。そして最後のもう一つがアフリカの音楽だった。これは凄かった。特にピグミー族と紹介したコンゴだ。20代後半にスランプに陥った時にこのコンゴの音楽をとにかく聴きまくった。嘘のない飾りのない剥き出しの音とは?彼らの地表から響く地鳴りのようなポリリズムを咀嚼するように聴き入ったあの時が懐かしい。そのコンゴの音源が収録されているLPを最近手に入れたので、貴重なDATを起動させなくても聴けるのが嬉しい。
10) 富樫雅彦 / We Now Create
2006年に親父が亡くなって今後の自分の音楽の在り方についてとても悩みました。これまで自分がやって来た音楽。フュージョン、ジャズ、ソウルやファンクロックも色々やって来たけど、ただリズムを刻むだけどいいのか?このままでいいのか?と自答自問する中で、今までやって来なかったフリージャズという得体の知れない音楽に興味を持つようになり、そして新しい世界に向かわせてくれたのが菊地雅章さんやケイ赤城さんのだと思う。そして出会ったドラマーが富樫さんだった。自分とは明らかに違う方法論で音楽するドラマー。それは間を意識し、音楽(ドラム)における森羅万象を全て受け入れ、無から構築してゆく。これだ!と思った。自分にないものは。だから富樫さんは自分というパーソナリティを革命的に変えてくれた恩人。音楽とは「楽に音は出せない」と教えてくれた。富樫雅彦さんのアルバムはたくさんあってどれも好きなのだが、やはりこのアルバムを選びました。まだまだ紹介したいアルバム、影響を受けた作品はたくさんあって、とても10枚には収まらなかったのですが… 。それでも自分にはなくてはならない作品なので、これをお読みになって頂きもし興味湧いて幸にも聴いてくれたら嬉しいですね。
master’s comment notice
vol1でも触れたが珠也はレコードコレクターでもある。当初この企画をお願いしたときは知らないロックのアルバムが並ぶのではと思っていたが奇をてらうことなく自分の音楽に影響を与えてくれたアルバムが並んでいる。文章を読んでいるだけでも心を揺さぶられる。以前に「俺音楽楽しんだことないよ」と聞いたような記憶があった。今意味が分かった。10富樫雅彦さんのところに書かれている「楽に音は出せない」という意味だったのだ。4/2から4/7まで珠也はlazyで演奏してくれる。書いていることに偽りのないことを確かめる絶好の機会と考える。予約をお待ちしている。