2017.11.10  ドキュメント24

若井俊也(b)北島佳乃子(p)山田玲(ds)
最近、何度か若手のライブを聴いたが、彼らならではの溌剌としたプレイには、掛値なしの好感を持つことが多い。今回は聞くところによると、店側の意向により若井を介して東京の生きのいい連中に白羽の矢が立ったらしい。楽器編成は世に溢れる典型的なピアノ・トリオなので、若手ポイントだけでは、聴き手を攻略できないのだと思いながら開演だ。1曲目(北島の曲)の入りのところで早速意表を突かれてしまった。彼女の外見から美麗な演奏をするものと想像していたが、いきなりロイクなのだ。これは気分の良い驚きで、最初の1コーラスに絡んだ音がライブの最後まで頭から離れなかった。もう一つの驚きは山田のケレン味を排したアグレッシブなプレイだ。見た目はあどけなさの残るワンパク風だが、殻を割って出たくてしょうが無いといったドラミングはストレートに伝わって来る。後ろでこれだけやられると、機嫌を損ねる格上?もいるのではないかと勘繰りたくもなる。言い伝えどおり人は見かけで判断しては決してならぬ。この三人は個々の共演歴は別としてトリオは初演ということらしいが、彼らの演奏現場には「安全第一」の看板がぶら下がっておらず、この目には新しく迫り来る足音がはっきり見えて来た。若者というだけでは何らアドバンテージにならないと割り切っていた筆者にとって、来るべきジャズ・シーンという視点が弱かったことは、少し反省しなければならないと思うのだ。結果的にこのライブは、北区国営放送局が様々に行きかう筆者の思いを追ったドキュメント24になってしまった。きつい凌ぎ合いで真っ向勝負している彼らの今後に期待を膨らませつつ演奏曲を紹介する。「ブラッキー・スナッピー」(冒頭に触れた北島作品)、「ハルシネーション」、「フォー・マイ・レイディー」、「アイム・オール・スマイルズ」、「アイ・リメンバー・エイプリル」、「ジス・ワンズ・フォー・バド」、「エスターテ」、「イフ・ユー・クッド・シー・ミー・ナウ」、「ジ・エンド・オブ・ラブ・アフェアーズ」、「ネイティブ・プレイス」、「ゼアズ・ノー・グレーター・ラブ」。バップ系も上々。
バン・マスには、作曲:宮川泰、作詞:安井かずみの歌謡ポップスを贈っておこう。『あなたに笑いかけたら/そよ風がかえってくる/だから一人でもさみしくない/若いってすばらしい』
(M・Flanagan)