2018.2.16 松島 With Rising -Sons 

松島啓之(tp)本山禎朗(p)若井俊也(b)西村匠平(ds)
 数年前までなら、トランペットの雄、松島に若手が胸を借りる位の受け止め方になっていたろう。それ自体間違いではないとしても、昨今のLiveのトレンドから推し量ると躍進する次世代の主役たちとの共演と捉える方が当を得ている。今やベテランに差し掛かっている松島も二十代の時点で際立つ完成度の作品をリリースしており、それを思うとこの世代によって日本Jazzの屋台骨の組み直し準備が着々と進められているという感慨を持つ。やや硬直化していた私的磁石の方向先を彼ら若い連中がそれを矯正しようとしてくれている。一応、これくらいのことを確認しながら、松島カルテットに耳を傾けるとする。1曲目は松島作「ジャスト・ビコーズ」という曲、重量感のある演奏だったが、松島は音色だけで説き伏せてしまい、我々の耳を大いに喜ばせてくれる。次の「マイルス・アヘッド」はすう~っと心に入って来て気持ち良くなるウォームな演奏。次もマイルスがやっていた「イン・ユア・オウン・スウィー・ト・ウェイ」、出来ればミュートでやって欲しかったなぁというのは少々我が儘か。次は「マイ・アイディアル」、この曲はかつてよく聴いたK・ドーハムの演奏を思い浮かべながら、あの時のように楽しませて貰った。1ステ最後は「イッツ・ユー・オア・ノーワン」、親しみ易いアップ・テンポのメロディ-を楽しんでいる4人の一体感が心地よく、結束していく共同体の仕上がり具合が伝わってきた。
2ステは松島の「ブルース・ライク・ディス」で開始、中休みで一呼吸付いた後のこの音色で再び至福。2曲目の「スリーピング・ダンサー・スリープ・オン」はJ・メッセンジャーズに在籍していた時のW・ショーターの曲で、初めて聴いたが耳慣れて聴こえたのは曲も演奏も一級品だったからだろう。3曲目はサド・ジョーンズの賑やかな「レディー・ラック」、若井と西村を大きくフィーチャーされた演奏となった。この両者は定期的に共演しており、息の合い具合は上々、ソロも聴き応え十分だ。ここでバラードの「エンブレイサブル・ユー」、この控えめな味わいは陰の名演と言えるものだ。最終曲は一転、一時代を制圧した「ビ・バップ」、迸る音から汗が噴き出してくる快演、この場にガレスピーがいたら腰を振って踊り出しそう。アンコールは華やかな演奏空簡にゆっくり幕を下ろす「ライク・サムエワン・イン・ラブ」にて余韻を残す。
 最後に一言。若井はプレイの柔軟さに加え懐が随分深くなっていると感じた。西村のアクセントの付け方は個性的、それにしてもこの男は活きがよく、こうでなければならない。本山は東京勢と凌ぎを削って来ただけあって、全曲に亘っての的確なサポートに加えノリがよく十分聴き応えあるものであった。Rising-Sun Of Rising-Sons。
 (M・Flanagan)