北島佳乃子(p) 若井俊也(b)山田玲(ds)
昨秋このトリオを初めて聴いて手応えを感じていた。北島の予想を大きく上回る力強さ、山田のはち切れんばかりのプレイ、若井の抜かりないサポートによって上々のパフォーマンスになっていたことを付け加えておく。それでは二度目のライブに行ってくるとしよう。
1曲目の北島作「ブラッキー・スナッピー」は中々ご機嫌な曲だ。ブレーキーのメッセンジャーズから管を抜けば多分こんな演奏になるだろうと思わせるファンキーな快演。2曲目の「フー・ケアーズ」(ガーシュイン)をここではテンポを上げて演奏したので曲の雰囲気を変えてしまう仕立てとなった。3曲目の「オンリー・トラスト・ユア・ハート」はベニー・カーターの上品な曲だ。こういう曲に歌の人は手を出したくなるんだろうな。4曲目はバラード「イフ・ユー・クッド・シー・ミー・ナウ」、この場にいなかった人にも聴かせてやりたい。1st最後はアップテンポの「ユアーズ・イズ・マイ・ハート・アローン」、若井と山田の緊張をほぐす掛けあいに会場は頬を緩ませた。2ndの1曲目はガレスピー「ティン・ティン・デオ」前半の熱を冷めさせない良好な保温状態の滑り出し。2曲目はT・ジョーンズの「レディー・ラック」。LBライブではこの曲を結構耳にするので東京の人気曲なのだろうか。3曲目はB・ハリスがその人に捧げた「ナシメント」では本家ハリスとはまた一味違ったぬくもりのある演奏となっていた。次の4曲目は北島の「ネイティブ・プレイス」。これは遠い故郷に思いを馳せながら書いたのかと思いきや、故郷にいながら故郷を綴ったものだという。このジョージア・オン・マイ・マインドの福岡版は旋律も演奏も心に響くものだった。最後はパーカーの「ムース・ザ・ムーチェ」をベースとしていると思われるが、モンクやら何やらが入れ代わり立ち代わり出て来るので勝手に「バップまぜまぜ」と命名した。言わずもがなのお祭り気分。アンコールは打って変わってピアノが音の気配りを追求した「ノー・グレーター・ラブ」だった。が、ドラムスの煽りで白熱のインタープレイに突入した後、名残惜しそうにテーマに戻っていったのだった。
冒頭のとおりこのトリオを聴くのは二度目となる。“北島PTA”とはもちろん保護者と教員の集まり、ではなく“北島Piano・Trio・Again”のことだ。90年代だったと思うが“ジャズ維新”という動きがあった。ひとまず今回の北島PTAを“快演隊”とでも言っておこう。
(M・Flanagan)