鈴木央紹(ts)宮川純(Org)
1年余り前に鈴木の「Favorites」リリース・ツアーの一環として、今日の二人と原大力を含めた収録メンバーによるトリオ・ライブがあった。この時に初めて宮川を聴くことができた。腕達者という以上にオルガンからアーシーな音を見事に引き出していたことが強く印象として残った。では、DUOならどうなるのか。上げ潮と円熟の頂上決戦、さぁ2時間がかりの実験を見届けよう。
わが国屈指のサックス奏者である鈴木は、これまで比較的オーソドックスな編成によるものが中心となって来たが、過去に若井優也(p)と圧巻のDUO演奏を行ったことがある。今回はオルガンに代わったが、期待にたがわずこの希少楽器との取り合わせから魅力溢れるサウンド満載の展開となっていった。例によって悠然と王道を闊歩する鈴木に、鍵盤をまばゆく走らせる宮川のフレーズは実に心地よく、それを援護するベース音が分厚いグルーブを演出する。加えて両者の音量バランスが抜群に良く、聴き応えをがぜん後押しする。類まれな力量を持つ両者は、技術至上主義とは一線を画しているのだが、スタジオの精度がそっくりライブ仕様に転じられていて、緩みなきパフォーマンスを演出していたと言えよう。何といってもライブには生の直接性というこの上ない味わいがあり、それが演奏家と客をつなぐ命綱となっている。そうではあるが、おみくじと同様、そこに“吉”ばかり仕込まれているわけではない。この演奏を聴いていると、そんな講釈はどうでもよい。2時間を経た実験結果は出色の大吉で決まりだ。個人的にDUOを好むものであるが、新たに記憶に刻まれるものが確かに付け加えられた。演奏曲は「エブリシング・アイ・ラブ」、「イエスタデイズ」、「ビウイッチド」、「ウイスパー・ノット」、「マイ・シャイニング・アワー」、「ユー・ノウ・アイ・ケア」など、アンコールの「カム・サンデイ」には、背筋がゾクゾクした。果たしてDUOの名演と呼ぶに相応しい一時を彼らは残していった。大力なくともパワー・レスにならなかったと言えば、原御大からクレームがつきそうだな。
ところで、お上が誘導するGO TO キャンペーンは“値引き”で人を釣る仕掛けになっている。一方、本日のGO TO LIVEは、某家具の宣伝ではないが、“お値段以上”ニッタリ。翌二日目に行けなかったことが無念。
(M・Flanagan)