鈴木央紹(ts)本山禎朗(p)三嶋大輝(b)伊藤宏樹(ds)
毎年、素晴らしい管奏者が来演する。彼らはいつも絶頂期と思わせる演奏を提供してくれる。メシ代を削ってでもその場に居合わせるのが、人生の正しい選択だ。
鈴木には王道を行く演奏家に欠かせない太い芯の通ったノリと、マジックと言われている曲への思いが咄嗟に音変換していくスリルがある。そうしたハッとする瞬間がGoodタイミングで繰り出される。我々に鈴木ジャズの真髄を感じさせてくれる秘密がその辺りに隠されているのかも知れない。鈴木の演奏を聴いたことの無い人に彼をどう伝えればよいかは難しい。閃きのゲッツ、豪快なブレッカー、柔らかいC・ロイドを混ぜ合わせて更に・・・、と言ってみても用をなさない。それは鈴木が歴史上のテナー・ジャイアントに比肩するレベルで演奏するONE&Onlyのプレイヤーだから止むを得ないのだ。すると鈴木評は弓折れ矢尽きてしまい、結局、生で聴いて見てくださいということに着地する。この醍醐味を一人でも多くの人と共有したいと思うのである。
さて、本レポートは鈴木5DAYSのうちの2夜分であるが、今回は5日間、1曲も被っていないそうだ。演奏曲は「ウイッチ・クラフト」、「ルルズ・バック・イン・タウン」、「フォー・ヘヴンズ・セイク」、「クレイジオロジー」、「マイルス・アヘッド」、「ハルシネーション」、「イフ・ユー・クッド・シー・ミー・ナウ」、「イン・ラヴ・イン・ヴェイン」、「バット・ビューティフル」、「ブルー・ローズ」、「セレニティー」、「マイ・シップ」、「エアジン」、「ヴェリー・アーリー」、「ニュー・ブルース(Knew Blues)」、「イマジネーション」、「飾りのついた四輪馬車」、「コートにすみれを」。
後ろのメンバーについて一言。三嶋は今回が鈴木と初共演、それが暗中模索、局面打開の格闘劇であったとしても、何かをモノにしたに違いなく、更に大きく輝くことを期待する。本山はここ5、6年の間に向き合った真剣勝負の成果を完全消化していて、安定感と主張が融和しているのが頼もしい。さらに風格さえ、と言えば褒め過ぎか。伊藤は大人である。妙な言い方をして申し訳ないが、最近の伊藤には大人が大人の演奏をしているという嬉しい等式のようなものを感じている。
多言は無用でエンディング。比較的ハコの大きい東京都内のライヴハウスは、ミュージシャンにPCR検査を求めるらしい。鈴木は既に数度受けていて、勿論、いずれもネガティヴだ。結果待ちにソワソワすることも無いという。テナーのリーディング・ランナーは演奏以外でも揺ぎ無しだ。なお、現下の情勢から聴きに来られなかった人のために2日分コンプリートでCDR提供される。これは、LBのポジティブ・キャンペーンに相当する。標題はミーハーながら、今やアイドルの片鱗もないT・俊彦氏のヒット曲から拝借、フゥー。
(M・Flanagan)