2021.2.26~27 松島啓之4&5 

松島啓之(tp)本山禎朗(p)三嶋大輝(b)伊藤宏樹(ds)・・With江良直軌(bs)
 松島を何度も聴いているが、いつも円熟の中に新鮮さを感ずる。何故だろうか。20代の松島には“Something Like This”という力作がある。そこは瑞々しい力感に溢れている。その後の活動プロセスには、若き日の核心部分が劣化することなく寄り添っていると思われる。おそらく松島は昔も今も同じ合鍵を使って演奏しているのだ。
 最初の数音で生き返ったような気分になった。飛び切り音が突き抜けて来たからだ。ここにはホールでは味わえない至近距離感があり、音楽会ではなくライブ、Jazz Lives Matterなのだ。初日はオーソドックスな4人編成で、トランペッターの曲を中心にプログラムされており、松島の演奏を思う存分聴くことができた。改めて音のニュアンスの多彩さに息を呑み、相当ニンマリしていた自分が想像できる。2日目はバリトン入りの2管編成。J・マリガン、P・アダムス、C・ペイン、S・チャロフ。バリトン奏者の名前は一気に底をついてしまった。コンボ編成では多くを聴いて来なかったのだ。江良の音を聴いていて、当たり前だが、その重厚な音色を直に確認することができた。初日と異なるサウンド・カラーに出遭えたことに何ら不満はなく、寧ろ大いに楽しませてもらった。カルテットの演奏曲は「Back To Dream」、「Miles Ahead」、「Ceora」、「PS I Love You」、「I Remember April」、「Just Out The Moment」、「Sleeping Dancer Sleep on」、「Lady Luck」、「Little Song」、「Lotus Blossom」、「All The Things You Are」、クインテットの演奏曲は「Just Because」、「Driftin’」、「Gradation」、「Panjab」、「Fiesta Mojo」、「Treasure」、「Darn that Dream」、「Black Nile」などで、江良の持ってきた幾つかの曲が披露されていた。
冒頭、松島に毎回新鮮さを感ずると述べた。得意の曲を得意のパターンで演奏するのは、アマチュアリズムの大いなる美徳である。一方、毎回新鮮さを提供するということはプロであることの美徳である。そうでなければ、次も、その次も足を運びたいという動機は生まれない。
思いっきり脱線するが、いま唐突にベンチャーズのことを想い出した。何十年も同じことを演っているのだ。つまり、ベンチャーズの最大のコピー・バンドは、ベンチャーズということになる。彼らは新鮮さを追求することは無く、一世を風靡した過去の演奏を型通りに再現する。進歩することを仕舞い込んだ音楽芸人だったのかも知れない。余計なことを思いついたせいで、プロの定義が揺らいでしまった。
(M・Flanagan)