12.19 布施音人TRIO 布施音人(p)若井俊也(b)西村匠平(ds)
ここ10年くらい若手を聴くのは殆んどレイジーのライブを通じてのことになっている。おまけに彼らの作品セールスには殆ど貢献していない。せいぜい30年位までの作品群において区切りをつけているからだと思われる。従って新譜に気を引かれることは余りなくなっている。けれども生演奏は、事情が違っている。目の前で繰り広げられる直接性にアルバムとは異質ものがある。それを証明する唯一の場がライブだ。そのライブ空間において、特に初めて聴く若手に感じ入ってしまうことがが少くない。今回の布施も初めてだが、最初はやや内省的に聴こえていたが、あながちそうでもなくお馴染みのスタンダードをとって見ても、適度なエモーションと随所に耳にしたことのないような音使いがあり、曲に新たな一命を吹き込んでいる印象を受けた。こういう時の気分の飛距離は予想以上に伸びているのだろう。端的に言って布施は可能性の塊だ。何でも来年の3月に管を交えてやって来るとのことだ。極道の妻たちにフレーズを借りれば「あんたら覚悟しぃやぁ」といったところか。演奏曲は「Isorated*」、「Tow For The Road」、「Country」、「Sado*」、「I’m All Smiles」、「East Thirty-second」、「White Lycoris*」、「I Love You」、「Guess I’ll Hung My Tears Out To Dry」、「Ladies In Mercedes」、「Beyond The Solstice*」。*は布施のオリジナル。
12.20-21 池田篤Quartet 池田篤(as)布施音人(p)若井俊也(b)西村匠平(ds)
雪ある時の池田は危険だ。何度も転倒し怪我も負っている。最近は危機管理が徹底されていると見えて、事なきを得ているようだ。それはさて置き、最新作の「Taste Of Tears」はスタンダードのコード・チェンジに、別メロを乗っけるという構想で仕上げたという。これをコントラファクトというらしい。このライブでも数曲演奏されたが、同作のトリックに気を取られるとが散るので、ひたすら池田を聴くという態度に徹した。それは身を尽くすように疾走する池田の魅力に浸りたいためである。そして「やっぱり池田だよな」と相好を崩す。その魅力の一方で、ある時を境にしてバラードの池田を聴きたくなっている自分に気が付いていた。そんな折に心のリクエスト曲「Flame Of Peace」が演奏された。こういう時は軽い動揺を伴いながら、この演奏だけでも来た甲斐があったっと思わせる。少しづつ淀みを漂白していく演奏がそこにはあった。この1曲をして全体をまで拡張させしめることはできないが、そう思わせるものがあったとだけ言わせて頂く。なお、布施の父親は若き池田と知り合う親友だとのことで、これは人の縁に隠されたほのぼの話だ。あとの二人にも触れておく。レイジーと若井・西村の関係は、地銀と地元企業のようなもだ。今後とも双方の推進planが嚙み合い、円満に音富(コレ当て字)が達成されるよう願う。まぁ本節は”胸に飛び込む池の音 ”に尽きる。
演奏曲は「Green Dolphin Street」、「Typsy 」、「Nearness Of You」、「End Of Summer Is Just A Little Bit Sad」、「Roller Coaster」、「Flame Of Peace」、「Tangerin」、「Body&Soul」、「Take The Coltrane」、「All The Things You Are」、「On The Trail」、「Jitterbug Walz」、「Never Let Me Go」、「Star Eyes」,「Every time We Say Good by」、「Yes Or No」、「For A Little Peace」など。
今年の大詰めを、この2編成のプレイヤー達が至って締り良いものにして行った。通常のダブル・プレーとは2つのアウトを指すが、このLive For歳末Saleは、それが2つのセーフでもあり得ることを知らしめてくれた。ウソが下手と言われている筆者が言うのだから信じて欲しいな。
(M.Flanagan)