針の穴にラクダを通す

裁判というものは全ての証拠を検察、弁護士、裁判官が共有し審議するものと思っていた時期がある。大間違いである。検察はある事件を公判に持ち込むまでに自分のストーリーを構築する。それに合致するような証言を被疑者から引き出そうとする。そこには恫喝まがいの取り調べも頻発する。容疑を否認すれば何度も拘置期間を延長される。裁判所が許可するからだ。大河原化工機事件では拘留中にガンが悪化し死亡した事例もある。人質司法の悪癖の典型である。袴田事件では結審するまで58年を要した。気が遠くなる。こうした矛盾を是正するため再審法の改定がいま議論されている。70年前に制定された刑事訴訟法は500ほどの条文で成り立っているが再審に関する部分は19だけである。法制審からあがってきたものは条文の変更はなく申し訳程度に付則が加味されているだけである。部会では流石の自民党議員からも怒号が飛び交う事となった。取り調べの可視化、証拠の開示、幾つかは是正されてきた部分はあるが不服申し立ての抗告条項には大きな問題が内包されている。再審には時間がかかりすぎると言う事である。被告が再審を申し立てしたとする。大方の裁判官はいい顔はしない。裁判の回数は裁判官の籤運で決まる。数年に一度という回数では必然的に結審するまで時間がかかる。逆に被告が無罪になったとする。検事は100%抗告する。チエホフの演劇論ではないが抜かれた剣は使われなくてはならない。抗告制度が有れば使うと考える組織体である。これを検事側には付与しなければ胸を撫でおろす検事が多数いるのではないかと言う議論がある。だが出てきた付則は裁判官側弁護士側に再審に見合う証拠を1年以内に提示せよという上から目線の条項であった。それは検察の体質に起因している。日本は世界でも治安が安全な国として知られている。それは我々検察が悪者を厳しく取り待っているからだ・・・・という自負から来ている。有罪立99%の検察を相手に再審抗告で無罪を勝ち取るのは針の穴にラクダを通すより難しいと司法業界では云い伝えられている。なぜラクダなのかは分からない。