
もうベテランの域にある池田だが、その人柄のせいか敷居の高さを感じさせない演奏家だ。これはそんな池田の最新作である。筆者は誰がどう評しているかを気にせずにレポートしているが、本作のライナーノーツは池田本人によるものなので、目を通してみた。それは「この年齢になると、ついつい”昔はよかったなあ”」という書き出しから始まっている。そして誕生してからの思い出やミュージシャンになるまでの経緯が記され、最後にかつて音楽の主力媒体だったLPレコードのA面、B面をイメージしてスタンダードを中心に収録したという趣旨になっている。そこで池田の思いに従い、針を落とす気分で聴いてみた。ライナーノーツのとおり、この作品で池田は自らの歩みを俯瞰しながら、慣れ親しんできた曲を抱きかかえるように演奏しているようにみえる。筆者にはエネルギーを使い果たすかの如く疾走する池田のイメージを消し去ることはできないが、ここでは何らの気負いも衒いもなく、だだ「平常心」だけが貫かれているように思える。誰しも年齢とともに、僅かな短距離ですら全力で駆け抜けることが出来なくなる。すると本作から演奏は記録を競うものではないという自明の原点が見え始める。膨大な時間を音楽に注いできた演奏家が過去を懐かしみながら、ひょいと立ち止まって現在の自身を開示したのがこの作品なのだという思いに至った。本作はバップ的なものからクール派を感じさせるものまで盛り込まれており、レコード面のAとBがCDに収められた愛すべき1枚となっている。どうだろう、誰の所有物でもないスタンダード曲が、ニンマリしながら池田に近づいて来ているように見えはしまいか。筆者は池田の「平常心」に潜む人生の奥深さを教えてもらったような気がする。いま池田に『Weaver Of Dreams』についてどう思うか尋ねてみよう。微笑みながら返ってくるだろう。”昔はよかったなあ”。
風の便りでは今年このメンバーでやって来ると噂されている。風向きが変わらないことを願っている。(ジャズ放談員)
Master’s comment notice
レコーディングメンバーで10/16,10/17ライブあります。
