beautiful live 7/19,7/20


2024.7.19 魚返明未・井上銘DUO
 言うまでもなく、この両者は翌日に控える竹村一哲グループのメンバーである。このグループの過去数度に亘るLBライブから受けたインパクトは、今日のジャズ最前線からの一突きといってよい。この日は何度も来演して多くのお得意様を抱えている魚返ともっと聴きたいランキングのトップを張る花形ギタリスト井上のDUOで、アルバムもリリースしているこの二人、そうそう生聴き出来そうにもないので真剣に聴き耳を立て続けた。曲は夫々のオリジナル(*魚返、**井上)で構成されており、曲順に沿いながら、虚実お構いなしに掻いつまんで振り返りたい。ある風景を映像として楽曲化した揺ら揺らする「*きこえない波」、井上による不動の名曲「**The Lost Queen」、几帳面に畳んでも取り出すといつも絡まってしまうイヤフォン・コードの不思議を捉えた「*Dancing Ear Bats」、視えない向こう側を美的にイメージする「**丘の彼方」、ほのぼのlikeな「**Slumber」、さすが魚返の曲と思わせる「*Herbie Westerman」、次の2曲は通しで40分に及ばんとする「*Cycling Road」~「*Embracable Ladder」、これは本日のハイ・ライトをなす壮大な熱演で見事だった。このほか魚返作のタイトル未定の2曲が披露された。アンコールは清新な曲想の”風の組曲”から「*Part1」。ここに鬼才同士の一騎打ちが終演した。DUOにしては少々異例の長時間にであったが、それは終始緩みのないものであった。ため息交じりにジャズ研のギター担当に一言感想を求めてみた。「こめかみに来ましたよ」、急所を一撃、いや二劇三撃されたのだろう。どっこい筆者も負けず劣らずDUOの丁々ハッシッシにオツムが揺れる幻覚症状に追い込まれてしまったのだった。
2024.7.20 竹村一哲Group

井上銘(g)魚返明未(p)三嶋大輝(b)竹村一哲(ds)
 今回はGroupの第2作「KAGEROU」のリリースに伴う発売先行ライブとなっている。ここ4、5年内に一哲以外のメンバーもかなりの頻度で聴く機会に恵まれてきた。彼らの活躍ぶりは今や我が国のジャズ・シーンをあまねく牽引するに至っているという評価に行きつく。それと共にこのオール・主役Groupの纏まりも年々強固になっていて、息の合っていることが手に取るように分かる。脱線話になるが、とかく私たちは石鹸のアワ多ければ多いほど、より効き目が働いているだろうという先入観を持つものだ。しかし彼らが採り上げる多くのオリジナル曲は、その演奏力ゆえに余分なアワが払拭されており、オリジナル曲に対する妙な距離感を持つことなく聴き続けることができる。つまり冗長さのない実質のみの骨太さを感ずるのだ。このアルバムは全国に名高い芸森スタジオで録音となっており、それは本作にかける意気込みの強さの表れでもあるだろう。聴き比べると予想通り完成度のアルバムに対し拡張度のライブということになるが、どちらも充実感に溢れていることは共通している。プロだから当然とはいえ、このライブでは手抜かりのようなものが皆無と言ってよく、従って安心してスリリングな演奏の中に入り込めることができたのだ。Sold Outに納得する。
演奏曲は「MOZU」、アルバム・タイトルの「KAGEROU」、「陰のみぞ知る」、「Towilight」、「洞窟」、「The Memory of the Sepia」、「いきり」、「Snow Falls」、「Fall Of The Wall」、アンコールは、かつて一哲と共演を重ねた板谷大の「No」。
 月並みだが、彼らの総合力の高さがストレートに伝わってきたというのが率直な感想だ。それはGroupを主導する一哲が、既に一ドラマーとしてのタレントを超え始めていることと深く関係しているのだろう。LBは日々多様な音楽を提供していて、夫々聴きどころに富んだものである。様々なフィールドを包摂しながらも、LBのポリシーとして中央付近に位置しているのは、紛れもなく今回のような王道を行く生演奏なのではではないか。両日ともスタンダード曲はなかったが、”Beautiful Live” それが筆者の目に映った店の景色 だ。
(M・Flanagan)