「朝日のあたる家」問題

jazzの歴史に言及した本に「朝日のあたる家」について述べた一節が有った。僕は中学生の時にフォークソングやっていてこの曲は歌ったことが有る。ラジオから流れるジョーン・バエズの歌で覚えた。ボブ・ディランも歌っていたらしいがあまり記憶がない。jazzを聴く様になった今はニーナ・シモンの名唱も知っているがジョーン・バエズの後はアニマルズがヒットさせたのでエリック・バートンの歌で甦ってくる。問題はこの歌の歌詞である。
There is a house in New Orleans
they call it the Rising Sun
And it’s been the ruin of many a poor girl
And me ,Oh God ,i’m One
口ずさむとこの辺の歌詞までは出てくる。歌詞は出てくる意味など分かってはいなかった。ニューオリンズの売春宿に身を落とした女性の歌である。はっきり言ってニキビ面の中学生には分かるはずもない世界である。だがジョーン・バエズの透き通るような歌声に騙されて歌っていた。アニマルズのバージョンではmany a poor girl をmany a poor boyに替えて歌っていると言う事だ。確かめようと思ったが又LPが見つからない。この歌詞を替えることに事によって現在のジャニーズ問題同様の少年を対象にした売春行為との解釈も可能であるが「刑務所」での日常と解釈するのが定説になっている。
ではなぜ歌詞を替えたかと言う事である。元の歌詞ではBBCラジオでかけてもらえない為だとアニマルズのメンバーは答えている。ここからは受け売りである。ところがboyバージョンはアニマルズ以前にも有ったことが分かった。1932年、クラレンス・アシュリーという白人フォークシンガーに寄ってレコーディングされている。その理由は二つあって元々girl バージョンとboyバージョンが有ったこと、もう一つは禁欲主義を戒律とする保守派プロテスタントによって売春を示唆する歌詞が忌避されていたと言う事である。ここにアメリカ社会の構造が見えてくる。wasp対非waspの格差である。ジョーン・バエズはメキシコ移民の末裔で非wasp、アニマルズはガチのwaspルーツ、英国白人バンドである。
この曲をキャンディーズが解散コンサートで歌っている。蘭ちゃんが語りを入れている。「一人ぼっちの私はニューオリンズにある一軒の家を訪れた。娼家だった・・・・」だがキャンデーズが歌った歌った歌詞はboyであった。「普通に戻りたい」娘が歌う歌でもないし何万人いたかは忘れたがそんなことを気にしていたフアンなどいたはずもない。