Two for the road

一度腰痛になると最低ひと月は悩まされることになる。腰痛ベルトと湿布薬で対抗している。自転車で湿布薬を買いに行った。
これがほんとの「チャーリ・クスリチャン」
このことが言いたかったわけではない。
その帰り、何台もの自転車が駐輪している狭いスペースをのろのろと走っていたら通り過ぎた場所で自転車が二三台倒れ始めた。進行方向に二人連れの外人が信号待ちをしていてこっちを見ていた。手のひらを上に向け肩を狭め小首をかしげた。「オーマイ ガット!」のポーズである。僕の責任ではないが倒れた自転車を起こした。自分の自転車が倒れていると強風のせいかもしれないがちょっと寂しくなる。自分の自転車を引っ張り出すために人の自転車をなぎ倒す輩がいるからだ。その行為を見ていた外人が親指を上に立てて「Great!」と声を上げた。僕は焼け落ちる家屋から赤ん坊を救い出した消防士くらいいい気分になった。信号が変わった。僕は「どうぞ、渡ってください」くらいの気持ちで「two for the road」と言って手を進行方向に流した。
「It’s a nice song」という反応が返ってきた。こんなところで「two for the road」を知っている外人に会うなんて奇跡である。
津村の弾く「two for the road」を思い出した。
僕はひとときだけ腰痛もコロナも忘れルンルン気分で自転車を走らせた。こういう時口をついてくる曲は「two for the road」ではなく「青い山脈だ」