
大石 学 (P) 米木康志(b)
今年も半分過ぎていく。そして上半期の幕をこのDUOが締め括る。これは10数年の長きに亘って継続されている。巧妙な組み合わせに腕を振るうレイジーにあって、このような固定的プログラムはnot at allの部類だ。なので「前回、誰と演ったけ?」ということがなく、聴いた記憶にもブレが小さい。すると思い付き半分に纏めることが許されなくなる。かくなる上は、我が良心に従うしかない。そこで大石という演奏家について名誉棄損にならないよう注意を払いながら考えてみることにした。多くの者に共通しているのは、オリジナルを始めどの曲どの演奏においても、何処にも属さぬ大石だけの世界を感じているとことだろう。ある曲を例に採れば、固唾を飲むような細心のラインが続き、少しづつうねり始め、そして突然炎のごとく入魂の一撃を打ち込む。瞬く間に我々の耳殻が吸収される。ここには一貫して淀みを濾過しようとする美意識を以て曲に生命力を注ぎ込む大石がいる。では、大石をして大石たらしめているものは何か。これまで聴いてきたことを手掛かりに推量してみたい。おそらく彼は大勢の中で妥協を強いられることを頑なに拒否しており、そうすることによってしか本当の調和は得られないと確信している。俗っぽく言うなら、多数派工作にまみれて陣営の拡張を図るような振る舞いに対する嫌悪感が、彼を突き動かしている。窮屈な群がりから距離を置くことによって彼は自己証明の拠り所を獲得していると言ってよい。それは孤立ではなく創造の磁場に相当している。大石を初めて聴いてから今日に至る20数年間、音楽家としての彼の人間像に関する漠たる私見を述べさせて頂いた。ヤレヤレまた的中率を下げたかも知れない。さて、このDUOは諸作をリリースしている。その積み重ねを2026年6月のレイジーで十分確認出来た。この高潔なLIVEは、どうやら筆者にとって好いた惚れたのJune Prideとなったようである。演奏曲は「Old Folks」、「Nearness Of You」、「K・J&G・P」、「Gemini」、「Continuous Rain」、「All The Things You Are」、「い~も~美~」、「微熱」、「Everything Happens To Me」、「Wish」、「Peace」など。
かつて毎年数度は来演していた米木さん。ここ5年ぐらいはメっきり減っているが、今回は1日置いて朋子さん岡本さんとの再会トリオの運びとなった。緊張感と和やかさが程よく、唯々心が温まるものであったことを付け加えておく。(M・Flanagan)
