2026.7.31 村田中@麗人バード


村田千紘(tp)田中奈緒子(p)若井俊也(b)中村海斗(ds)
 この時期の札幌はビア・ガーデンだの花火大会だの恒例行事の渦中にある。恨みはないが人だかりは鬱陶しいから近づかない。最早この種のイベントにいつ行ったったかすら思い出せないぐらい疎遠の状態だ。そんな折、街の片隅(失礼な!)で大規模催し何のそのの貴重なライブの幕が開いた。メンバー個々は聴いているも、村田中のユニットは初めてとなる。ここで少し脇道に入るが、好きな音楽はと問われて、「私ジャズです」という問答がある。このシンプルな受け答えには幾分注釈が必用である。例えば筆者が「ジャズです」と言ったとする。個人的には一時よく聴いたフリー・ジャズは今や殆ど聴かなくなっているし、あのフュージョン全盛時にあっても殆ど聴いていないという事実がある。一口にジャズといっても、筆者にとってのジャズはこういう経緯の上に存在している。人によっては更に狭い範囲でジャズに寄り添っているかも知れない。これは難しく考える必要などなく、聴き続ける基準として感じられるかどうかだけが残っているということだ。この基準に照らせば、無理して網羅的に聴く必要はなく、楽器においても管であれ鍵盤でれ垣根は取り払われていく。垣根が無くなり楽器群がバリア・フリーになっても、善良なるジャズ・ファンが、スティービー・ワンダーとミスター・マリックを見間違うことが有ってはならない。両者ともその分野のマジシャンだなどと言うなかれ。さて、話を立て直し、今夜のツー・トップである村田中に焦点を当てることにする。これまでの印象を語ろう。二人の共通点はあからさまに熱ある方位に向かって行くことはなく、熱っぽさを内側に託すことを選択していることだ。それは彼女らを写すアルバム・ジャケットと一致していないと思うのだが、ズレが気になっているだけで意地悪で言っているのではい。実際このライブを聴いていても、筆者が持ってきた印象は正鵠を得ていると思うのである。飽くまで聴きどころは、内省をコアとする演奏である。それが趣味の良い演奏として私たちに提示される。そこに海斗が程よく揺さぶりを掛け、俊也が総体の纏まりを付けていく、これがカルテットとしての全体像を型づくっている。そのバランスは上々のもので、「また呼んで欲しいリスト」に入れて置くことにしよう。演奏曲を紹介しておく。スタンダード「On The Trail」、C・コリアの”Friends”から「Waltz For Dave」、田中の凝ったアレンジによって曲のイメージを怪しく変える「How High The Moon」、スタンダード「These Foolish Things」、ブルー・ミッチェルの曲らしき「 Cup Bearers」、時々作曲の達人となるジジ・グライス「Social Call」、ワンダレイの名曲「Summer Samba」、田中の演奏に対する思いの丈をMAX詰め込んだ「Bright Lights」、作曲者不明の「Blues」、アンコールはサービス曲の枠に収まらない惚れ惚れする「I Hear A Rhapsody」。
 この前日は村田レスの田中奈緒子トリオ。演奏については二重◎を付けるに留めておくが、この日は海斗25才の誕生日だった。田中のHappy birthday to you~に乗ってレイジー店主が手で持ちきれないサイズのケーキ進呈。この”至上の愛”に海斗ビックリ、ライブならでの微笑ましい一コマであった。(M・Flanagan)