
魚返明未(p)井上銘(g)
何てこったい!この感嘆には二つの意味がある。結果が散々か胸がすくかだ。このLIVEは文句なしに後者である。今回はDUOということで、個人を論点とすることには疑問が残るが、多少なりとも思い入れがあるので、静寂と喧噪、容易に混ざりあわないもの透過する魚返と淀みないソロに変幻自在のストロークの井上ぐらいは言っておきたい。本LIVEは、このDUOの第2弾がリリースされたのを記念するツアーの一環である。彼らは2年ほど前にレイジーに演奏を残している。その時のセカンドはノン・ストップで完走するという息もつかせぬパフォーマンスだったこともあり、特に記憶が生々しい。その記憶の延長上にあるのがこの日ということになる。記憶は時とともに曖昧になることを避けられないが、その幾つかはHow DeepなOceanにも届くものとして薄れ行かない。LIVEでは「あれっ?」と思わせる箇所が時々あるものだが、彼らはそれを完璧にクリアしてきた。今日は彼らのお手付きを探そうか、筆者はそのような端たない聴き方はしないが、エラーがないから感動を呼ぶとは限らないと常々思ってはいる。この二人は気心の知れた間柄であるが、その関係を通り越して楽器どおしの息遣いにまで調和が及んでおり、二児が一児のごとき双生から生まれる一体性を体現している。重要なのは夫々の個性が独立していることにある。この独立した個性同士が交差を繰り返す中で、特異なほどサウンドの共同時空が濃厚になって行く。これがDUOの最大の聴きどころだと言い切っておく。この流れは初めて聴くオリジナルは、その旋律を上手く捕まえられなくとも、何ら気にならないというところに導いていくのである。もう回りくどいことは言うまい。いま筆者は相当凄いものを聴いてしまったという実感の中にいて、LIVEを振り返りながら新作アルバムに耳を傾けているところである。この日の演奏曲は勿論アルバムからのもの(*)が中心だ。紹介しておく。「*ゆらゆら」、「*Light Gray Variations」、「The Lost Queen」、「*May 3rd」、「 Cycling Road」、「A Memory Of H・ H Mama」、「*グラサン」、「遥かなる青」、「*鉛色の鐘」、「*陽射し」、アンコール「I thought About You」。かつて「Just the tow of us」とういうキャッチーなヒット曲があった。それに結びつけてみると、”我らたった二人”で演り切ったという彼らの爽快感ある表情が、緊張続きの場内を和らげたと思うのである。余談ながらクライマックスでは、魚返スペシャルが炸裂、「ブツッ」高音部D線上のアリャリャ。少なくとも店の主だけは口を固く真一文字にしていたようである。
今日の完成度はヤバく、もうあと一言が出ない。なので著名作家の助言を拝借することにした。アガサに推理してもらったところ、本件「LB急行達人事件」とのことである。しかも「今後何が起こるか分からずTo be continuedよ」と付け加えるているのである。その時は喜んで継続捜査に同行しようと思っている。
なお、新作「魚返明未 井上銘 Ⅱ」は予想に違わぬ深みのある出来ばえになっている。めいめいの聴き方で「明・銘」を楽しんで欲しいものだ。 (M・Flanagan)
